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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (42)
経済小説
2011年1月24日 11:28

平成20年8月「資本増強と札幌土地」

<資本増強の模索>

5月頃より、ある都銀の地区部長が黒田会長を何度も訪問していた... 5月頃より、ある都銀の地区部長が黒田会長を何度も訪問していた。銀行側が会長と打ち合わせする議題は事欠かなかったが、クローズアップされてきたのは、資本増強の問題である。当社は、上場会社ではあったが、黒田会長は創業者として、依然親族も含めて47%の株式を保有していた。私は、当社の役員がもう少し成長し、何事にも堂々と対応できるようになるまでの間は、取引先などを含めれば議決権の過半数を維持できるようにしておきたいと考え、その旨黒田会長と申し合わせていた。
 しかし、今般の金融情勢がしばらく続く可能性が高まっていた。このため、銀行側は、黒田会長に、早めの資本増強をしておきませんか、と増資を促していたのである。

 当初は、黒田会長は、資本増強については否定的だったようだ。後継者が独り立ちするまでの間、今しばらくオーナー社長として議決権を握った状態でいたいと考えていたようだ。しかし、銀行側はそのうち黒田会長だけではなく、岩倉社長や私のもとにもやってきて、しきりに資本増強を説く。
 私自身も、議決権の確保は諦めてでも資本増強に動くことが必要と考えていたので、私からも黒田会長を説得することにした。

「今、銀行から資本増強のことを言ってきているじゃないですか。私としては、資本増強に動けるのであればやりたいと思います。販売状況を見ると、毎週のように顧客の価格目線が下がってきています。先月の会計士が来社した際も、資本増強の可能性があるか否かは、会計士の重大な関心ごとでした」
 と私。
「今のうちに資本増強ができるならやっておこう。ただ、できれば優先株を使って議決権は3分の1以上を確保できるようにしたい」
 と黒田会長。
「それは技術的には可能性があります。しかし、優先株を出すと10%の配当を出さねばなりません。借りるよりはるかに高い金利です。もちろん、当たってみなければわからないので、それも希望事項として出しておくべきと思います。しかし、それに固執してしまうと難しいと思います」

 このように報告したうえで、銀行にM&Aの仲介部門の担当者を紹介してもらい、準備を進めることとした。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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