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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (43)
経済小説
2011年1月25日 11:42

 M&Aの提案をするためには、過去の決算書や取締役会議事録、在庫不動産の謄本、事業計画や資金繰り予定表など、厚さ5センチのファイル3冊程度の資料を取りまとめなければならない。これらを、総務部長にて役割分担して集め、補強が必要なものは私自身も追加の資料を作成し、早々に候補先に対するアプローチを開始した。
しかし、そうしている間にも刻々と事態は悪化した... しかし、そうしている間にも刻々と事態は悪化した。その頃アプローチしたモリトモも、もはや余裕がないとのことであり、後には倒産していった。それでも、大手不動産ファンド会社カネックスの担当者は、相当詳しく当社のデューデリジェンスを行なってくれた。当社の手持ち不動産のうちコイン駐車場などで活用している物件の、その収入明細まで提出を求めてくるような細かさであったが、私も積極的にこれに応じた。が、10月上旬に得られたカネックスからの最終回答は、投資不可であった。彼らの物件価格目線で当社の不動産の評価をしなおすと当社はすでに、50億円の債務超過である、ということであった。

 後日談となるが、当社が3月に仙台のビルを売却した先であるエルグランドも、同社社長が黒田社長宛訪問したときに示唆したとおり、その後オフィス用品供給会社であるユニパットからの資本増強を受けることになり、これで一息ついたかに見えたが、破綻してしまった。7月にロリックスからの優先株による資本増強を受けたフェイントコーポレーションも後に破たんした。このようにファンドバブル崩壊の初期に資本増強したグループも、その後次々になぎ倒されてしまうほど、今般の金融危機は猛威を振るったのである。

<札幌土地の販売交渉>

 例の都銀の融資延長が1カ月刻みとなってしまった札幌都心部の土地には、財閥系不動産会社が関心を示していた。もともと、物件を仕入れる際、当社に次ぐ金額で応札したのがこの財閥系会社であった。交渉窓口も、仲介会社や関連会社の投資顧問会社などではなく、この財閥系会社本体の札幌支社であった。当社としては、何とかこの会社を相手に札幌土地の売却を実現したいと考えた。
 当社は、十数億円という金額を提示し、これに対して財閥系会社より、金額などの記載はないものの、当該土地の購入検討の意向がある、という旨の文書も受け取った。たしかに、財閥系不動産会社本体の札幌支社長の氏名と捺印があった。財閥系会社から購入検討の意向がある、ということが当該銀行の融資延長交渉には重要な材料であった。
 この相手先に、札幌土地を十数億円で9月までに売却し、その後、途中まで穴掘りが進んでいる基礎工事を継承してもらえれば、1カ月切り替えとなっている融資を返済できるため、相当に肩の荷が軽くなる見込みだった。財閥系のほかにも、地元の資源輸入会社から比較的よい条件の提示を受け、書面を受け取っていた。そのため、8月時点では、この物件は何とかなるのではないか、という期待を抱かせるものがあった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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