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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (44)
経済小説
2011年1月26日 11:07

<営業方針の逡巡>

アポなし営業を仕掛け、リーシング活動を行なっていた... 8月8日に、福岡都心部の国体通り沿いの土地の決済が完了した。買い手は国内大手企業系の不動産会社である。これで3カ月程度の運転資金を確保できることとなった。しかし、販売活動は依然停滞しており、5月に借り替えた大分ホテルについても、すぐに2カ月が経過し、8月の借り換えが迫ってきた。前述の札幌の土地はもちろん、福岡都心部の天神南部の大型の土地も、早々に売却する必要があった、
 当社はメイン行を置かず各行と並行で取引をしていたため、昨年までは銀行に報告するのは、もっぱら、借入しているその対象物件の進捗状況のみであったが、もはや全行から会社の全体の資金繰り表の提出を求められていた。しかし、そのような債権者の目線とは裏腹に、国体通り土地の売却で油断が生じたのか、あるいは夏の暑さのせいか、昼間なのに営業社員が大勢社内にいるなど、どうも販売活動に真剣味が欠けるように思えてならなかった。

 そういえば5月頃、総務部宛に、後に倒産した新興デベロッパーであるターバンコーポレーションの営業担当者がアポイントなしに来社したため、たまたま空き時間であった私は彼の話を聞いてみた。すると、彼らは福岡市内で開発した新築のテナントビルを売るために、市内の主だった企業にアポなし営業を仕掛け、リーシング活動を行なっていたのである。私はそのようなローラー戦術などは、無策であることを自ら明らかにしているようなものであり賛成できなかったが、ただ、他社はそういう努力もいとわずに何とか物件を売ろうとしていることを示すために、当該資料を営業担当役員に回覧したことを思い出した。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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