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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (46)
経済小説
2011年1月28日 11:49

 いっぽう、7月頃から、営業活動のあり方が多少改善されてきたのも事実である。
 私は最初から
「これからは財閥系や貸しビル会社など、不動産会社のなかでもキャッシュリッチな相手先にしか売れませんよ。だからこれまでのように懇意のファンド会社にいってもダメです。その現実を見据えてください」
 と主張していた。
 それが、ここにきて営業現場にも、その現実が浸透してきていた。

少しずつキャッシュリッチな企業との商談ができるようになってきた... まず、少しずつキャッシュリッチな企業との商談ができるようになってきた。先述の札幌の土地で財閥系と商談していたのはその典型である。同じく竣工時価格が40億円台となりそうな東京都新宿区内のオフィスビル(工事中)は、同じく戦前の財閥の流れを引く貸しビル会社と商談していた。名古屋の工事中の賃貸マンションは、大手自動車メーカー系の商社との商談が進んでいた。大分のホテルは、地元最大の貸しビル会社にも持ち込んでいた。天神南部の土地を地元の公益企業に提案していた。
 また、各エリアの小ぶりの土地を売却していくために、7月以降、営業系の課長クラスを各営業所に送り込んだ。これにより、少なくとも現実的な価格目線を把握できるようになったことは認めなければならない。そかし、それにしても、これまで営業社員を各エリアに置きながら、状況報告が営業責任者までで止まり、現実がトップに報告されていなかったのは残念なことであった。

 8月上旬の金曜日、第1四半期の監査も終盤で、今後打ち出していくリストラ計画もほぼまとまり、つかの間の安堵を感じていた。しかし、金曜日の夕方、担当の会計士が血相を変えて私に食って掛かってきた。
 監査手続きとして、営業責任者に対するヒアリングが行なわれ、その内容を参考に、会社として販売予定価格の見直しを図っていったことは既に述べた。そのなかで、名古屋の都心部で工事中の物件については、岩倉社長の決断で、14億円を予定していた販売価格を9億円に下げていた。ところが会計士が提出を求めた内部資料のなかに、名古屋の営業社員からX取締役に提出された報告書が混じっており、そのなかでは『どうひいき目に見ても6億円が限界です』とはっきり書いてあったのである。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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