今、各地の中心市街地・商店街の衰退が激しく、また、イオンやイトーヨーカ堂に代表される大型店も苦戦が伝えられています。西日本地区では、イトーヨーカ堂は店舗がないため馴染みがありませんが、セブンイレブンを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスの一員です。日経ビジネスの最近号によれば、このイトーヨーカ堂は、今後国内174店舗の半分程度を閉店・縮小する模様と報じています。イオンは上半期決算で好調でしたが、これはコスト削減によるもので、決して売上が好調なためではないようです。同誌は、ダイエーやマイカルの破綻で始まった「総合スーパー最終章」は今後も続いていく、としています。
中心市街地に位置する商店街にしろ、大型店にしろ、一体何が起こったのでしょうか。ここで商店街と大型店との関係を法規制という側面から過去を振り返っておきましょう。
「主婦の店ダイエー」が1959年(昭和34年)から驚異的な発展を遂げ、三越の売り上げを抜いて小売業トップに輝いたのは1972年(昭和47年)のことでした。
この頃から、市街地に立地する大型店は、商店街の売上げを圧迫するようになり、既存の商店街から進出反対の声が上がるようになりました。1974年の進出表明から約5年かかって出店したダイエー熊本店の地元商業組織との、いわば戦争のような騒動を覚えておられる方も多いでしょう。
ダイエーの熊本出店表明と時を同じくして、政府は大規模小売店舗法(大店法)を74年3月に施行しました。この法律は、中心市街地(当時はこの用語はなかった)への大型店の出店を規制するものであり、消費者の利益と中小小売店の利益のバランスをとろうとしたものでもありました。大店法では、商業関係者、消費者、そして中立の立場に立つ学識経験者の三者による商業活動調整協議会(商調協)の設置が義務づけられ、この場で大型店出店の調整が行なわれていました。しかし、この構成要員には、商業者として商店街組織の代表や既存大型店の代表も含まれていたため、既得権の擁護に傾くことがあり、大店法は運用面でさまざまな問題が生じ、折りしも破竹の勢いで大型店舗網を拡大しようとする流通業界からはこの法律を改正しようとする声が大きくなりました。
ただ、この法律を改正する力になったのは、当時、日米の貿易格差を縮小する目的で行なわれた日米構造協議の検討結果による外圧でした。
当時、日本トイザらスが国内第1号店として新潟市へ出店しようとしましたが、地元の反対にあって出店凍結という事態を招いていたこともありました。
このようなことから91年には、大店法が改正され、商調協が廃止されます。このため大型店の出店が容易になり、各地で大規模SCが続々と開発され、結果的に既存の商店街の衰退を招くことになります。
その後も、日米間のさまざまな問題に商業関係も巻き込まれ外圧に屈するかたちで大店法の廃止に至ります。
そこで登場するのが、2000年6月に施行された大規模小売店舗立地法(大店立地法)です。先の大店法では、地域の小売業や商店街の営業に影響が出ないよう、開店日、店舗面積、閉店時刻、休業日数を調整することができたのに対し、この法律は、大型店舗への規制を大幅に緩和した法律で、「生活環境の保持」という点に視点を絞っています。大店法にあった「中小小売業の事業活動の確保」という視点はなくなってしまいます。また、大店立地法では、大型店の出店は、都道府県ないし政令指定都市への届け出制であり、都道府県は、生活環境への影響などを審査し、地域の住民や経済団体の意見を踏まえて大型店側に対策を求め、生活環境対策が不十分な場合、変更を迫る「勧告」をすることができるにとどまります。つまり大型店は、周囲の環境に配慮すれば、比較的中心地にも大型店を出店しやすくなったのです。これによって、商店街の衰退に拍車がかかったのは事実でしょう。
そこで、この大店立地法の施行と同時に中心市街地の空洞化を食い止めるために新たに「中心市街地活性化法」が制定され、さらに、都市計画の面からも規制を強化しようとする「都市計画法」の一部改正も行なわれます。
この大店立地法、中心市街地活性化法、都市計画法の3つをまとめて「まちづくり3法」というようになります。この3法のうち、後者2つは、98年に施行されますが、大店立地法は、商店街が大型店の進出への対応力を強化するのに時間がかかるとして、法律の施行は2000年になった次第です。
さて、まちづくり3法ですが、このお話、とくに中心市街地活性化法に基づいて筆者が北九州市小倉地区のタウンマネージャーを務める中心市街地協議会の活動などについては、次回にお話しします。
(株)地域マーケティング研究所
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