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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (47)
経済小説
2011年1月31日 15:49

 大変なことになった。このままでは、損失幅がなお3億円拡大することになる。
 金曜日の夜ではあったが、江口取締役および福岡の営業担当の稲庭取締役に電話をかけた。
 前回のヒアリングで9億円で売れそう、といっていたのは嘘だったのか。そしてさらに赤字幅が拡大することに対して誰が責任を取るのか。X取締役への電話がつながった。

金曜日の夜ではあったが、江口取締役および福岡の営業担当の稲庭取締役に電話をかけた...「X取締役、あなたの部下からあなたに、名古屋のビルの販売可能価格は6億円がいいところであるとの報告があがっています。これが現実であれば、私としては当然、それを参考にして第1四半期決算を修正しなければなりません。明日午後が山陽監査法人の審査会なので、経理は、本日中に修正をしなければなりません。そのためには、今すぐに名古屋ビルの販売予定価格の社内決済をとっていただく必要があります」
 と私。
「マーケットの目線を部下に報告させただけなのに、なぜそんなに問題になるんですか」
「販売予定価格というのはマーケットの目線を見て決めるものでしょうもん。それでは、ヒアリングで稲庭取締役がいっていた9億と、名古屋の社員がいっている6億ではどちらが信憑性が高いんですか。直ちに資料を整理していただき、9億か6億か決めてください」
 と私。
 私の立場としては、名古屋ビルが6億円になった場合は修正仕訳を一本入れるだけである。しかし、その前提としての機関決定はX取締役よりとってもらう必要があった。それに山陽監査法人が作成している調書や営業から提出を受けている資料の修正などもあり、実務上土曜日の早い時間に決めてしまう必要があった。

 やがて、X取締役から指示があったといって、営業課長と土地仕入の課長が会社に戻ってきた。週末とあって、もう居酒屋で一杯やっていたようで、そこから呼び出されたとのことであり申し訳なく思った。
 私は、問いただした。
「稲庭取締役は、名古屋の物件は9億円で売れるといっていたが、ここにあるように、名古屋の営業社員がX取締役に、6億以上は無理という報告をしている。これはいったいどういうことか。6億でしか売れないんだったら、工事を止めて取り壊して更地で売ったほうがいいかもしれないくらいだ」
 土地仕入の課長が答えた。彼は、本社の土地仕入の課長だが、今は、名古屋圏の物件を売るために名古屋営業所に長期出張しており、本日たまたま会議のために本社に帰っていた。
「どういうことかと言いたいのは私のほうです。私はX取締役に現状を報告して、値下げしてでも早く売るべきと提案しております。そうしているのですが、営業担当の役員たちの間で協議がまとまらず、値下げの件もちょっと待て、今はまだ動くな、ということになっています」
「会社として意思決定しないのに勝手に動いていけないのは確かだよ。でも、これは悪すぎる。仕方がないので、ぼくから岩倉社長に確認して決めるよ」

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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