日本主導で前向きな取り組みを
<経済成長の負の側面 公害問題への対応>
―日本は経済成長の負の意味で公害問題がありましたが、今、中国は同じ道を歩んでいるように見えます。東北部の砂漠化や、それによる黄砂の問題がありますが、工場から排出される「ばい煙」や有害物質の影響で気管支炎や肺がんの罹患者が急増していると言われています。
松本 報道で知りましたが、地方都市の重慶でさえ、大気汚染対策として街全体でCO2を出さないスマートシティにしようと検討しているそうです。しかも、それをプレゼンスしているのは、韓国などの海外企業だそうです。
エコ技術は日本が世界で一番なのですが、営業力が弱いというか対応が遅いというか、なかなか先取りできないでいます。ですから、日本はもっとスピーディに海外の情報をつかんで、先端技術を売り込んでいくことが重要ですね。
中国では、まだ経済発展と環境対策を両立させるということはなかなか難しい面もありますが、中国政府は国民に向けて「経済格差の是正」と「環境問題の改善」を呼びかけているわけですから、日本はその背中を押すかたちで、官民一体となって強力に環境ビジネスを提案していくチャンスでもあります。
―ただ一方で、環境省のエコ関連事業が仕分け対象となるなど、国内で方向性が定まらないという面もありますが。
松本 仕分けの対象は政策ではなく手段です。手段を点検して無駄を省いていくことが事業仕分けの目的ですから、それによって政策の根幹が揺らぐとは考えておりません。仕分けの中身を見ていきながら改善するところは改善するし、主張するところは主張するという姿勢で臨んでいきたいと考えております。
―次に水俣病訴訟の問題についてお聞きしますが、患者側の支援策はどのようにお考えですか。
松本 10月1日から特措法の一時金が支給されました。熊本県も努力していただいています。そして、何よりも患者さんたちと直接お会いしてご要望をお聞きしなければならないということで、昨年10月には熊本の水俣市に行って現場の生の声を聞くことができましたし、11月には新潟を訪問して被害者や地域の皆様の思いを伺うことができました。
今年も引き続き、水俣病被害者の救済や和解、福祉の充実に取り組むとともに、水銀汚染防止のための「水俣条約」の実現に取り組んでいきたいと考えております。そして、公害に遭われた地域こそエコタウンとして発展できるよう、街づくりを含めてバックアップしていきたいと考えておりますし、"ノーモアミナマタ"を世界に発信していきたいと考えております。また、環境省としましては、地下水汚染の未然防止対策などをはじめ、大気、水、土壌環境の保全に努めていきます。
【聞き手:弊社代表 児玉 直】
【文・構成:吉村 敏】
<プロフィール>
松本 龍(まつもと りゅう)
1951年福岡市生まれ。馬出小学校、福岡中学校、福岡高校から中央大学へすすみ、政治学を専攻。80年、参議院議員・松本英一の秘書として政治の現場へ。90年、衆議院選挙に初当選。96年、国会等移転に関する特別委員会委員長。97年、商工委員会理事。2000年、環境委員会委員長。09年、衆議院七期に当選。10年、環境大臣、内閣府・防災担当大臣に就任。
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