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上海最先端レポート

チャイナマネーによる海外不動産投資(下)~日本人が知らない中国事情(84)
上海最先端レポート
2011年1月20日 07:00
劉 剛

<ロンドン>

ロンドン ある調査によると、ロンドン新築市場における中国内陸や香港投資家による取引は、目下全体の10.8%を占めているそうです。ロンドンで物件取引を取り扱っているある弁護士事務所のデータによると、11月までの半年間のうち中国人による取引は20件で、総額は1.2億英ポンドになっています。これは、今まででは想像できないほどの額です。

 このようにロンドン市場が盛況を呈している原因については、ある弁護士が以下のようにまとめています。

 (1)英ポンドの為替レートが低い
 (2)ロンドンの物件市場価格の低迷が長引いている
 (3)一定の投資金額を満たした者に対し、永住の資格を与えるという英国政府の誘致策

 また、表面上は同じようなロンドンの物件購買ですが、投資家による購入目的は人それぞれです。以下に、その一例を挙げます。

 (1)ある香港の靴メーカーが1,300万英ポンドをかけて、商業物件を購入。同メーカーの社長はロンドンこそが世界の設計センターと信じており、自社のブランド創出に助かるとの想いを語っている。
 (2)ロンドンの中古物件をプラスアルファしながらデザインし直し、転売することによって利益を生み出すという人。
 (3)市況が不景気のうちに投資行なっておき、景気が回復するのを待つという人。

<海外物件購入の注意点>

 海外の物件を購入するにあたっての注意点は、以下の通りです。

 (1)為替レートの変動。去年は米ドルが切り下げ続けている一方、オーストラリアドルが安定的な上昇を実現しています。
 (2)海外不動産市場の先行き。経済成長期の真っ只中にある中国と違い、海外の景気変動サイクルを把握するのはより困難です。たとえば、アメリカのデトロイトは、自動車産業の衰退にともなって、物件価格が下落の一途をたどっています。
 (3)銀行のローンを、できるだけ利用した方がお勧めです。そうすることによって、銀行が物件の審査してくれることにもなります。たとえば銀行からローンを拒否された場合は、ある意味それが不適切な投資だったと認識してもいいことになります。
 (4)それぞれの国には、すでに成熟した市場や完備な法規があります。したがって、海外の物件に投資することによって短期間でボロ儲けすることができるというのは、あり得ないことを念頭に置いておくことが必要です。

<将来に対する展望>

 ある統計では、昨年、仲介業者を通じて行なった中国による海外の物件投資額は、50億人民元になるとの予想が出ています。これを、もし直接購買行為を行なったと考えれば、実際の金額いっそう大きくなります。
 ただし、中国人による投資が急速に増えたとしても、全体的に見ればまだ占める割合が低いのが現状です。

(了)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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