JALは上場準備室を設け、再上場を視野に入れている。誇り高きJAL社員たちにとって倒産と上場廃止は屈辱的な出来事だった。再上場は彼らのプライドとアイデンティティーを満たすものとなるだろう。
東証1部上場企業だったJALは、2010年1月19日に会社更生法の適用を申請して倒産し、東京証券取引所は同年2月20年、上場廃止にした。2兆3,000億円余の負債を抱えて倒産したJALは、保有機材など資産が劣化しており、9,500億円もの債務超過状態だった。大株主だった糸山英太郎氏は上場廃止以前に売り抜けたが、それでも投資損益は「大失敗」だっただろう。売り時を逸した株主たちの株は、言うまでもなく紙クズと化した。
そんなJALに対して、東京・大手町にある官製ファンドの企業再生支援機構は11月、3,500億円を出資した。企業再生支援機構は、事業管財人という立場で東京地裁と調整しながらJALの再建策を確立する一方、唯一の株主として日々の経営を監督・指導している。民主党政権が三顧の礼をもって迎え入れた京セラ名誉会長の稲盛和夫氏をサポートする格好で、同支援機構からは中村彰利会長補佐、水留浩一副社長の両名が12月からJALの取締役に入っている。
支援機構の出資した3,500億円は、公的な性格を帯びた資金である。過去にあった類似の組織、産業再生支援機構は、ダイエー、カネボウ、三井鉱山など41社の案件を手がけた上で、存続期間中に300億円を納税し、解散した際に約400億円を国庫に返納した。つまり国民負担というロスを発生させることなく、700億円余を国庫に納めたのである。
この「成功体験」があるせいか、新設された企業再生支援機構はJALでロスを生じたくない心理が強く作用する。一時はJAL再生タスクフォースの中核メンバーだった産業再生機構出身の高木新二郎、冨山和彦両氏に対して、強いライバル意識を持つ瀬戸英雄弁護士(企業再生支援委員長)や水留氏が企業再生支援機構にかかわっているため、一層その傾向が強い。
かくして考えられたのは、3,500億円の出資を株式再上場によって換金する方策である。企業再生支援機構は、その設置法によって支援機関は3年以内と定められている。同機構のJAL支援の開始決定は2010年1月19日だから、遅くとも2013年1月には支援を終えなければならない。こうしたスケジュールを逆算する格好でタイムリミットが設定され、JALはその更生計画の中で「2012年中に再上場する」という基本方針が盛り込まれた。
【特別取材班】
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