＜新銀行設立による影響や動き＞

　今年の九州の金融界にとって間違いなく重大ニュースの一つと言える「北九州銀行設立発表」。山口フィナンシャルグループ（下関市　福田浩一社長　以下YFG）が北九州市に本店を置く新銀行を設立すると2010年３月に発表して以降、九州地元の金融機関は冷静な対応を続けてきた感がある。しかし、心中穏やかではない事は明白で、特にふくおかフィナンシャルグループ（福岡市　谷正明社長　以下FFG）福岡銀行の対応の早さは目を見張るものがあった。

　FFGの谷正明社長は「健全な競争は、地域の利用者にサービス向上をもたらす」と新銀行設立について表向き歓迎するコメントを発表した。しかしその一方で、FFG傘下の福岡銀行は同日、小幡修副頭取を北九州代表として常駐させる人事を発表。支店長クラス５人を含む営業10人の増強や、北九州営業部ビル建て替えなど、激しい闘志を見せている感がある。また、福岡銀行は18年ぶりに今年12月６日、山口県宇部市に宇部支店を開設した。同行によると、山口県は九州各県とも人的・経済的な交流が盛んな地域であり、九州ならびに山口県の更なる活性化に貢献していきたいと発表しているが、12年前に一旦撤退した宇部への出店は、山口銀行による北九州銀行設立への対抗措置という意味合いが強いのは明らかだ。
　
　その一方、YFGの福田浩一社長は謙虚な姿勢を貫いているイメージが強い。「地域密着の独自サービスを提供し、より個人に近い存在の銀行を目指す。YFGとしては、広島から北九州までの500万人に親しまれる銀行をつくる。福岡市でのシェアは１・数％。挑戦権すらもっていない」とコメント。しかし、北九州地区の貸出金シェアは、ゼンリン、三井ハイテックなどの有力企業との取引が厚い西日本シティ銀行が27％、福岡銀行が25％で拮抗している。そこを山口銀行が13％で追い、確かに福岡市では感じられないが、北九州ではもはや無くてはならない程の存在感を見せつけている。地元金融機関幹部は「新銀行は金利戦争を仕掛け、一気に地元２大銀行の争いに割って入ってくるのではないか」、「再編を仕掛ける布石ではないか」と緊張感、危機感を隠さなかった。

【神田　将秀】

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