9日、鹿児島県阿久根市で、竹原信一前市長(51)のリコール(解職請求)住民投票による失職に伴う市長選挙が告示された。投開票は16日。立候補したのは、竹原信一前市長と新人で養鶏業の西平良将氏(37)の無所属2名。各陣営は、同日朝出陣式を行ない、集まった支持者を前に熱い訴えを繰り広げた。どちらの陣営にも多数のマスコミが詰めかけ、さながら国政選挙の様相を呈していた。
各マスコミは増援部隊を現地へ派遣した。市内の宿泊施設は、泊まり込みで訪れる他県からの記者などでほとんど満室という盛況ぶり。9時前後に行なわれた両陣営の出陣式には、どちらも撮影スタッフが垣根を構築した。
出陣式を終えて選挙カーが出発すると、マスコミの車が6、7台と追跡取材を始めた。普段は静かな阿久根市の至るところを車の行列が走り回った。同市を全国的に有名にしたといえる竹原氏は、報道陣が囲んで質問を行なう、いわゆる"ぶら下がり"を何度も受けた。
NET-IBニュースの取材に対し、「(市政について)当たり前のことをやっているのになんでこんなに注目されるのか」と、本音では首をかしげる竹原氏。その一方で、街頭演説では「全国が注目している」と市民に訴え、初日は全市内をくまなく回った。選挙スローガンに「阿久根が変える」を掲げる。
竹原氏と同様に多数マスコミの取材を受けた西平氏は、出発後、出身地区から選挙カーで巡回。「官民格差是正は民を高めることも重要」と、周辺の農家へ呼びかけ、頻繁に下車して握手をして回った。掲げる選挙スローガンは「地を行く」だ。
注目度の高さはマスコミの数以外からもうかがえた。竹原氏の選挙事務所には富山県、福岡県、熊本県など、他県から応援にかけつける人たちの姿もあった。福岡県福津市から訪れていた男性は「男としてのブレのなさに好感を持っている。直接会って話を聞き、どこが独裁者だろうかと感じた。分かる人には分かる」と語った。
一方で「選挙だけを取材するのではなく、阿久根市政のこれまでの経緯をちゃんと勉強してから、今起きていることを伝えてほしい」と、ある市民は複雑な面持ちで語っていた。
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