16日に投開票が行なわれる阿久根市長選。「投票が近づくにつれ激しさを増す」といった文句が各紙面を踊るだろう。しかし、穏やかな阿久根のまちで、激しさが増していくのは市民一人ひとりの心の葛藤ではないだろうか―。
市長就任以来、約2年3カ月の間に2度の出直し選挙に臨むことになった前市長・竹原信一氏(51)。初当選時を含めれば、実に3回目の市長選となる。選挙事務所内には、その歴史を物語る過去と現在の選挙ポスターが展示されていた。「阿久根を変える!」、「阿久根は変わる!」、そして「阿久根が変える!」と変遷したキャッチコピー。しかし、その言葉に込められた阿久根への想いは変わらない。
竹原氏を支持する阿久根市義・石澤正彰氏は自身のブログで回顧している。
「何時だったか私は竹原氏に『今度市民にソッポを向かれる事があれば、もう2度と苦労する等必要ない!』と言った事がある、イヤ私は彼が家族、家庭を省みることなく犠牲にして、世のなかの不条理の悲しさをバネに戦っていた事を知っている。私利私欲無く他の誰が出来たと言うのだ。『...2度と苦労する等必要ないで!』と、私が心ない言い方をしたのだが、その時の彼は今まで1度も見たことがない悲しそうな表情に見えた」(原文のまま)。
『対立』といわれる状況は、竹原氏が市議としての政治活動をスタートさせる以前から続いていると言える。竹原氏の政治活動の源流は、市議会・市役所の問題を徹底批判した内容のビラを配布して回った市民運動だ。
そして市議時代、市議会の同志は今回の阿久根市議補選で無投票当選した山田勝氏ひとり。竹原氏のブログで実態を暴露されることを恐れた市議たちは、竹原氏と山田氏がいる議員控え室を避け、ほとんど議長室にいたというエピソードも聞く。「好きか嫌いか、それだけで決められる」と、竹原氏は市議会を批判する。そこ(議決)には市民のための議論はない。個人的感情しかないのだと。
候補者の街頭演説を聞いていた老人は、取材した記者に怒りをぶちまけた。「地方分権なんてとんでもない! 今まで何もしてこなかった。いや、何もできなかった。よっぽど中央集権でやってもらったほうがいい!」と。
【山下 康太】
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