福岡市政の様々な面に影を落としてしまっているアイランドシティ(人工島)事業は、「大規模事業の一斉点検」においても市民の期待に応える見直しはできませんでした。そして、吉田前市長も、アイランドシティ(人工島)事業を白紙から見直すと公約して、当時現職の市長であった山崎広太郎氏を破って当選したものの、やはりその見直しは市民の期待には応えられるものではありませんでした。
現市長の高島氏は、さすがにアイランドシティ(人工島)事業の見直しについては公約しませんでしたが、こども病院のアイランドシティ(人工島)への移転については、その再検証を公約に掲げています。しかし、子ども病院の移転問題は、こども病院そのものの問題に関わるだけでなく、アイランドシティ(人工島)事業の進捗にも深く関わっており、正直な感想を言わせていただければ、その見直しは大変困難であると言わざるを得ません。高島市長のご活躍を心より念じております。
さて、山崎市政に戻りますが、まず、公約に掲げた「大規模事業の一斉点検」です。
当初、100億円以上の「市街地整備等の基盤整備」として、(1)アイランドシティ整備事業、(2)地下鉄3号線建設事業、(3)香椎駅周辺土地区画整理事業、(4)九大移転先関連事業、(5)渡辺通・春吉地区市街地再整備構想の5事業を対象に選定。
これに40億円以上の「都市施設」として、(1)鮮魚市場の再整備、(2)国際会議場、(3)武道館機能を有した市民体育館、(4)グリーンビレッジ構想、(5)自然動物園構想の5事業を併せて計10事業(その後、東部清掃工場の建替事業を加えて11事業に)が選定されました。
そして、(1)社会経済状況や市民ニーズの変化などにより、事業の意義、必要性などがうすれていないか。(必要性、妥当性)、(2)事業目的に即した効果が期待できるのか。規模、機能は適切か。(事業効果)、(3)効率的な計画となっているか。採算性はどうなのか。(効率性、採算性、代替性)、(4)厳しい財政状況や市民ニーズを踏まえ、事業の実施時期、期間は適切か。(緊急性、優先性、市民ニーズ)という視点から点検が行なわれました。
その結果、武道館機能を有した市民体育館、グリ-ンビレッジ構想、自然動物公園構想の3つの事業を中止し、さらにその他の3つの事業を大幅に縮小して約300億円の事業費削減という成果を残しました。一度着手した公共事業を中止することは福岡市で初めてのことで、これは大きな行政改革の実績ではないかと思っています。 ただ、いくつか残念なこともあります。
【寺島 浩幸】
≪ 第2回 「喉元深く突き刺さった骨」
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<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制
係長などを歴任し、2010年8月に退職。在職中は、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。
<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援
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