いつ解散があってもおかしくない政情ながら、今春最大の焦点は統一地方選。鳩山由紀夫から菅直人へ繋いだ1年半の民主党政権に、国民が地方選を通してどんな反応を見せるか。"親菅""反菅"を問わず、民主党内からは「このままなら惨敗」という悲鳴が上がっているが、国民の最終判断が示されるのは間違いない。争点はそれぞれ地域によって異なるとはいえ、国政に繋がる共通の重要テーマが鳩山前首相のパフォーマンスで浮き彫りになった。
<民主党いまだ諦めず 参政権付与法案>
「辞めるのを止めた」と引退宣言を撤回、昨秋からあちこちに顔を出す鳩山氏だが、「なぜ、あんなところに?」と思わせたのが、昨年11月25日。同氏が姿を見せたのは、北朝鮮による延坪島砲撃で死亡した韓国軍兵士の遺体が安置されている韓国軍病院だった。正規の葬送式典でもなければ、請われたわけでもないはずの前首相が弔問に訪れるのは、異例中の異例。さすがは「鳩山事務所には顧問格の韓国人スタッフもいる」(朝鮮半島ウォッチャー)と言われるだけに、目立つポイントは外さない。
とはいえ、鳩山氏が犠牲兵士の弔問目的だけで訪韓するはずはない。主目的は、同月25~26日にソウルで開かれた大韓民国民団(民団)の幹部会合に出席することだったようだ。同氏は民団の選挙支援に謝意を表し、民団が求める外国人の地方参政権について「今後とも努力する」、と挨拶している。参政権付与法案は政権交代後、民主党がたびたび国会に上程する動きを見せたものの、世論の反発の強さもあってまだ出せないままだ。
実際、総務省集計によれば昨年12月31日時点までに、「参政権付与に反対決議した地方議会は293、慎重姿勢を表明しているのが97」(同省自治行政局選挙課)で、昨年8月の約360地方公共団体議会からさらに約30団体増えている。
「参政権問題を最初に提起した長老たちは、『小沢(一郎)と鳩山にだまされた』と諦め顔。今の民団幹部は、パチンコやタクシーで稼ぐカネ回りのいい目立ちたがり屋が多いから、どこまで本気か疑っていますよ」(民団関係者)。
しかし、鳩山発言に見られるように、民主党内の参政権付与推進派は諦めてはいないはず。というのも、国政レベルで大上段から参政権付与を振りかざす前に、いずれそれにつながる地ならしが、目立たない自治体レベルでは着実に進行。住民投票条例あるいは住民投票制度など、住民が行政に直接参加するシステムに外国人を取り込む自治体が増えているからだ。
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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