<増加している 全国自治体の"憲法">
1月8日、産経新聞1面に「外国人にも投票権 生駒市に抗議1,500件超」という見出しの4段記事が載った。奈良県生駒市が、市政の重要事項について市民の意見を問う市民投票条例案を、定住外国人にも投票権を付与するかたちでの成立を目指しているという。同条例案は、投票資格者の6分の1以上の署名で市民投票を請求できること、および投票結果が4分の1以上の場合は、市長や議会に尊重義務が生じるというもの。
問題は、投票資格者で年齢が18歳以上、そして3カ月以上居住する外国人にも付与されるという点。それに対して、抗議が殺到しているというものだ。
「18歳以上、外国人もOK」というのは、昨夏、本誌既報の民主党代表選の選挙人資格と同じであり、選挙に対する同党の基本的考え方と同じだ。
生駒市同様、市民の市政参加の手法を制定しようとしているのが愛知県の安城市。同市は昨年12月6日、「市民参加条例案への意見を募集します」として、「このたび市民が市政に参加するための手法を定めた市民参加条例の案がまとまりましたのでお知らせします」、と、今月5日締め切りで市民の意見集約をしていたもの。
「結果は集計中で、2月15日に発表します」(市民活動課)と言うが、今回の条例案のベースは昨年4月に施行された「安城市自治基本条例」。「自治基本条例は自治体のいわば憲法のようなもので、今回はそれに沿って市民が市政参加する手続きに関する条例案です」(同)という。
全国の自治体で安城市と同じく、「自治基本条例」または「まちづくり基本条例」という名の"憲法"を定める市町村が増えている。元祖は、北海道のスキーリゾートとして知られるニセコ町。01年4月、民主党の逢坂誠二衆院議員(北海道8区)が同町の町長時代に「ニセコ町まちづくり基本条例」として定められたもの。
「当時は全国初の試みとして注目されました」(ニセコ町企画課)というように、以来、同町に倣って「自治」あるいは「まちづくり」の名を冠した自治体としてのいわば最高法規を制定するところが続々誕生している。逢坂議員が鳩山内閣で地方分権、地域活性化、地方行政担当の首相補佐官になったのもうなずける。
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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