NET-IB NEWSネットアイ

ビーニュース

脱原発・新エネルギーの関連記事はこちら
純広告用VT
カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

行政

成果主義へのアレルギー体質~福岡市・行政改革の実態(7)
行政
2011年1月19日 08:00

 福岡市役所発で全国的な展開となったDNA運動は、ある程度の成果を出しましたが、残念ながら市役所の大きな制度改革・システム改革にまで結びつくことができませんでした。私は、その原因は大きくふたつあると思っています。そして、それこそが行政改革を困難にする要因であるとも言えるものです。

 原因のひとつは、やはり行政組織の閉鎖性です。

福岡市役所 市職員経験者から任命された副市長をトップにした公務員のピラミッド組織は、軍隊組織をモデルにした官僚組織ですから、内部の命令系統や権力階層は明確かつ強固であり、外部に向かっては非常に閉鎖的な体質を持っています。DNA運動も「運動論」の範囲に留まっているうちは、それほどの組織的な抵抗もありませんでしたが、制度改革・システム改革へと進化するようなレベルになると強い抵抗が見受けられました。変化を嫌う役人文化においては、一度制度化すると永続性を持ってしまうという恐れがあるからです。

 特に、人事評価制度に関しては、かなり強い抵抗がありました。それは、ミッションや顧客を定義して成果を明らかにするドラッカー・マネジメントを背景にしたDNA運動が、人事評価の分野へと進展していけば、当然に成果主義へと向かうことになるからです。市役所の人事評価制度は、上級、中級、初級などの採用試験毎の年功序列を基本として、減点主義により篩(ふるい)にかけていくというやり方一辺倒でしたので、成果主義へのアレルギーはかなり強いものでした。

 しかし、人事評価における減点主義では、市職員がリスクをとって新しいことに果敢に挑戦し成功したとしても、結果的には評価されずに、逆に失敗すれば減点されて篩にかけられてしまうのです。ですから、業務のやり方を変えて不都合が起こるリスクを負うよりも、何も変えずに前例主義を踏襲しておけば安心ですし、不利益もなく、もしそれで不都合なことが起こったとしても言い訳ができるので、市職員の気持ちは自然と、リスクを負う業務変革など新しいことへ挑戦する意欲を失っていく傾向にあります。

 私は、この減点主義とともに、公務員の身分と終身雇用を保障するメリットシステムもまた、行政組織の閉鎖性を生み出す要因となっていると思っています。メリットシステムの下でも、やはりリスクを冒さずに前例を踏襲し、上司に逆らわないでおけば、定年まで安心して勤めることができるからです。若い頃に血気盛んで上司に逆らうことが多かった私は、先輩の市職員から「市長は長くても12年間、短かければ4年間しか市役所にいないけれど、(市職員の)上司は30数年居続ける。誰の言うことを聞くべきかははっきりしているだろう」と真顔でたしなめられたことがあります。減点主義と公務員の身分保障は早急に改めるべきだと考えています。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第6回「DNA運動の拡大と終焉」 | 第8回「『聖域』ある改革の限界」 ≫

<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制
係長などを歴任し、2010年8月に退職。在職中は、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
寺島氏ブログ
・ツイッターは、コチラ


*記事へのご意見はこちら

関連記事

powered by weblio


行政一覧
東日本大震災
2011年8月 3日 07:00
純広告VT
純広告VT

純広告用レクタングル


IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル