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バイオの寵児「林原」がのめり込んだ不動産事業(上)
倒産を追う
2011年1月31日 10:28

 私的整理の一つである事業再生ADR(裁判外紛争解決)手続きを申請したバイオ企業の林原(岡山市)は1月27日、経営破綻の責任を取って林原健社長(69)と弟の林原靖専務(64)が退任すると発表した。グループの負債総額は約1,400億円。債務超過額は551億円(2010年10月末)にのぼっていた。同社は非上場だが、バイオ関連の有名企業。バイオの寵児は何で躓いたのか。

<世界初トレハロース量産技術開発>

 林原グループの林原生物化学研究所は昨年9月、日本癌学会学術総会で、へその緒の血液から培養した新細胞が、がん細胞だけを破壊する機能をもつと発表。がん治療にとって画期的なメカニズムの発見といわれた。独自技術で培養した新細胞を「HOZOT(ホゾティ)」と命名して特許出願。新しいがん治療法につながれば、「ホゾティ」は抗がん剤「インターフェロン」、天然甘味料「トレハロース」に次ぐ第3の柱に育つことが期待された。

林原、事業再生ADR申請 林原グループは微生物が作る酵素などの技術でバイオ企業として成長。これまでの特許は5,000件を超える。なかでも画期的なのが1994年、トレハロースの量産技術の開発。トレハロースとは、甘みが砂糖の半分の天然の糖だ。これを人為的に作り出すことは不可能といわれてきた。同社は、でんぷんをトレハロースに変える酵素を発見し、世界で初めて大量で安価な生産に成功した。素材の鮮度を保つ、食感を高める、保水性を高めるなどの特性に企業が注目。今やスナック菓子やカップ麺から美容液、さらにはクールビスシャツなど約2万種の商品に使われている。

 トレハロースは、赤い1つの目に触覚とヒゲが生えた宇宙人キャラクター「トレハ星人」を使ったテレビCMで、一般的に知られるようになった。現在、同社が世界生産のほぼすべてを担う。トレハロースの量産技術の開発・商品化に成功した林原健社長は、バイオの寵児と謳われた。

<日本一の水あめ工場で大成功>

 同社は1883(明治16)年創業の水あめ製造業が発祥。1961年、4代目にあたる健氏が慶應大学在学中に父親が死去したため、19歳の若さで社長に就任。卒業後、岡山に戻った健氏は役員を集めて「この会社は僕しか潰せない。潰すなら僕の手で潰す。どんなかたちになるかわからないけど協力してほしい」と言って、デンプン加工業からの脱皮を宣言。幸運にも酵素を生み出す菌が見つかり、酵素・微生物の研究開発企業に転換した。

 研究開発に多額の資金を投入できたのは、父親、林原一郎氏が残した莫大な遺産があったからだ。一郎氏は1932(昭和7)年、家業である林原商店(現・林原)の3代目社長に就いた。京都大学化学教室で学んだ研究者だが、経営手腕に長けていた。戦後の甘味不足の時代に、次々と事業を拡大。林原コンツェルンといえるほどの企業グループをつくった。年配者になつかしい「カバヤのキャラメル」のカバヤ食品を設立したのは一郎氏だ。キャラメルに封入されている、当時の人気キャラクター、ターザンの絵入りカードを集めると、カバヤ文庫がもらえることで人気を得た。

(つづく)

【特別取材班】

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