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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (51)
経済小説
2011年2月 7日 15:09

平成20年9月「このままでは中間決算できません」

<すぐやってくる中間決算>

 四半期決算の厳しいところは、ようやく決算発表が済んだと思ったら、すぐ次の四半期の締めが近づいてくることである。当社は3月決算会社だったので、第1四半期が終わるのが6月、そして第1四半期の法定開示期限が8月14日。そして、9月末には第2四半期の締めがやってくる。第2四半期の開示期限は11月14日である。まさに休む間もないといってよい。
 なお、金融商品取引法では、上記のとおり第2四半期という用語を使うが、本稿では一般の方への分かりやすさのため、あえて中間決算という言葉を混用することを了承願いたい。
 第1四半期決算で苦労したのは、棚卸資産の低価法適用に伴う物件販売予定価格の決定と、GC注記を付けるにあたっての向こう1年間の資金繰りの実現性の挙証であった。今後1年間の資金繰の見通しがそれなりについていることが、GC注記付で決算を開示する条件なのである。
 そして、向こう1年間の資金繰を維持する、言い換えれば向こう1年間、会社を延命させるうえでの最大のポイントは、やはり、今持っている物件がいくらで売れるかという点であった。

四半期決算の厳しいところは、ようやく決算発表が済んだと思ったら、すぐ次の四半期の締めが... そこで私は、ふたつの資金繰りシミュレーションを行なってみた。
 ひとつは、「営業が考えている販売価格」でのシミュレーションである。値下げしてでも何とか不動産を処分しないと会社を存続できない、というのは、第1四半期の厳しい監査手続きを通じて、営業責任者もいよいよ認識しつつあった。いっぽうで、営業報告書を見ると、依然として情報根拠の薄い顧客情報も目に付いているのも事実であった。そこで、改めて本音の販売価格のヒアリングを行ない、「営業が考えている販売価格」を決定した。
 もうひとつは、「中間監査を通せる販売価格」である。当社の資金繰りは、少しずつ手持ち不動産を売却して、そこで利ザヤを確保することで、初めて運転資金を生み出せる、というものである。普通なら日銭を生み出せるはずの不動産管理事業は、既に固定資産の減損会計を適用していることからもわかるように、キャッシュフローがマイナスだったからである。そのため、いったい各物件をいくらで販売すれば、向こう1年間の資金繰りを維持できることが説明でき、監査証明をもらえるのか、という観点から、「鉛筆を舐め」てみたわけである。
 ただ、勝手に物件が高く売れる想定をしても、販売可能性を挙証できなければ監査を通すことはできないので、あくまでも「営業が考えている販売価格」を重視した。
 これらをシミュレーションしてみると、「営業が考えている販売価格」でも1年間の資金繰りを維持することは、なんとか可能であった。ただし、それを実現するためには、10月に予定している福岡の天神南部の大型土地と、9月に予定している札幌の大型土地を両方とも、予定している価格で、10月中に売却しなければならないことがわかった。
 9月末には山陽監査法人からも、会社に資金繰り予定表を今のうちに確認しておきたい、といって同シミュレーションの提出を求めてきた。中間監査に向けてジャブを打ち込まれたようなものだったが、今般作成したシミュレーションを提出した。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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