高齢化社会とは関わりなく、近年は「アンチエイジング(老化防止)」なる言葉がメディアに氾濫、加齢にともなう各種疾病や生活習慣病の克服はもとより、美顔・痩身からメタボ解消まで、老若男女を問わず人生のキーワードにもなりつつある。アンチエイジング=抗老化医学と呼ばれるように、含まれている意味は従来医学から栄養学、美容やエステまで幅広い。その分野でがんの免疫療法が生かされる可能性がある。
アンチエイジングについて、ときに「抗加齢」や「加齢予防」という表現が見られるが、正確には加齢にともなう「抗老化」または「老化予防」と言うべきだろう。加齢は、時間的経過として止めようがないからだ。その加齢とともにさまざまな疾病、皮膚や顔のたるみ、シミ、シワなど、いわゆる老化が進む。それを予防または防止するのがアンチエイジングだ。今や日本人の死亡率トップのがんは、その典型だ。
がん細胞自体は誰でも、毎日1,000個以上発生しては消えるとされる。健康であれば免疫細胞ががん細胞を攻撃し駆除してくれるが、高齢化やストレスなどによって免疫細胞の働きが悪くなると、がん細胞が増殖して発症することになる。その治療法としてこれまでよく知られているのが、手術療法および放射線療法、そして化学療法すなわち抗がん剤だ。それに続いて近年実用化され、研究も進み「第4のがん治療法」として注目されているのが免疫細胞療法である。
いわゆる免疫療法とよばれるものは幅が広く、サルノコシカケや冬虫夏草などの漢方系民間療法から最新の医学的療法まであり、免疫細胞療法は後者の最先端だ。
「免疫細胞療法」を一言で言えば、採血した患者の血を専門医療機関で培養し、再び患者の体内に戻すもの。数十億個まで増強、活性化された免疫細胞が分裂増殖するがん細胞を攻撃、駆除することにより、がんの進行を止めたり再発を防止する。ときには消滅させる。まさに老化を防止し、若返るアンチエイジングそのもの。最大の特徴は自分の血なので拒否反応などの副作用がほとんどなく、さらに放射線治療や抗がん剤治療など既存の治療と併行して行なえることだ。
同療法を行なっている病院、クリニックは全国に広まりつつあり、培養する免疫細胞の種類や培養方法も異なるが、仕組みはほぼ同じ。まず患者に来院してもらって問診と検査。そして20~30cc(ml)採血する。それを数日~2週間かけて培養したところで再び患者に来院してもらい、点滴によって患者の体内に戻す。12回を1クールとして、その後は経過を見て患者と医師で継続するか否を決める。すなわち月1回、平均なら1年というのが一般的なやり方だ。
(つづく)
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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