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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (54)
経済小説
2011年2月10日 14:09

<難航するリストラ>

 当社はすでに、東京以外の各都市の撤退と、社員の3割削減による経費削減と、開発から仲介への転換による収益構造の転換で来年度に黒字を回復する経営再建計画を策定し、取締役会で決議していた。そして、経営再建計画は8月14日の決算発表とともに、会社として履行するべき立場となった。
 撤退する事務所の賃貸人への退去予告などは総務部長が即座に実行した。人員削減については、3割削減の部署別削減数をすでに立案してあったので、これを私から各取締役に示達した。開発から仲介への転換は、まず手持ち物件を売却したうえでのことであったが、江口常務を中心に仲介事業への進出の準備を進めることが求められた。

しかし人員削減は難航した... しかし、人員削減は、過去にリストラを経験したことのない会社ゆえか、大変難航した。
 全社の営業本部長である江口常務は、この時期、札幌などの顧客との商談に当たり本社内にいることが少なかった。そして、営業担当の取締役などは、自部署のリストラに反発して岩倉社長に直訴し、2時間も3時間も粘る。岩倉社長にもまとめきれない状況だったようだ。私自身も、営業系の取締役たちから、営業本部・管理本部の削減数の根拠は何かなどと問い詰められたことがある。四半期決算やJ-SOXなど、上場会社の経営管理は、新しい制度が目白押しであったため、リストラをしつつも上場会社として存続しようと考えたら、管理本部には最小限必要な体制があった。それでも、管理本部としても全社の削減率と同率の約3割を削減しようと考えていた。
 建築・外注担当の中井常務は、開発に伴う建築の発注監理業務のリストラに関しては、その仕事がなくなる以上やむなしとの姿勢であったが、事務系の余剰人員を自部署に受け入れて、そのマンパワーをもって外注業務であるマンションの清掃等を内製化することについては、相当の抵抗感を示していたようだ。
 企画開発部長をはじめ何人かは、余剰人員を清掃等の現業にあてるよりも希望退職を募集してほしいと主張した。しかし、希望退職では有能な人材を先に失う可能性が高かったため、応じられなかった。
 このようなことから人員削減は、こう着状態に陥り、あっという間に10月となった。いよいよ風雲急を告げ、私も民事再生に向けた対応に注力せざるを得なくなったため、結局リストラは民事再生の申立後に実行することとなった。しかし、おかげで解雇した社員に対しては、民事再生法の規定により当面の支払を棚上げすることで余裕資金を確保できたため、法定の1カ月間の解雇予告期間を置き、会社都合の退職金を規程上の満額支払うことができたのは不幸中の幸いであった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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