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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (55)
経済小説
2011年2月11日 09:00

<大型2物件の行方>

 当社が法的整理に至らずに存続するためには、天神南部と札幌駅前の大型土地を10月中に売却することが鍵であったことは先に述べた。この2件を売却するために、天神南部については主にX取締役及び本社営業責任者の稲庭取締役がセールスにあたっていた。札幌駅前については岩倉社長がセールスしていた。

「銀行としては、いざというときに転売が容易なように、更地のままにしておいてください」... 天神南部の土地は、もともと老舗百貨店が福利厚生施設として保有していたものが、同社の経営危機に伴って地元の学校法人に売却され、しかし、その学校法人では何らの活用がなされず放置されていた。当時そこは天神都心部からかなり離れ、周辺にはラブホテルなどが点在する裏ぶれた立地であったが、その後、天神の商業集積が高まり、当該エリアは小規模なブティックなどが多く出店し、裏原宿的な立地に生まれ変わりつつあった。それを平成19年暮れに当社が契約し、20数億円で仕入れたものであった。この土地を当社が仕入れたということは、地元のマスコミでも話題になり、どのような再開発がなされるのか大いに期待されたものである。当社は、ここに、工期を最短とするために地上4階建てのビルを建築し、1階を商業施設・上層階はオフィスとするプランを決定した。土地・建物を合わせた総額では40億円の大型物件となるはずであった。黒田会長は、周辺の街並みを一変させるような瀟洒なビルとすることを意図し、研究に余念がなかった。

 20年春には、建築確認申請も下りた。いっぽう、この物件を仕入れるための資金は、メガバンクを筆頭としたシンジケートローンによったのだが、不動産市況の変調が始まっていた時期であり、建築資金の融資は、土地・建物の売却契約が締結された後でないと実行されない、という条件が付されていた。このため、私はX取締役や黒田会長から、竣工しているほうが売却しやすいので、この物件を早く着工したい、という意向を再三受けたが、これを了承することはできなかった。しいて言えば、建築資金の支払が全額竣工後でよければ、どうぞ着工してください、と申し上げたかったが、そのような条件を受けるゼネコンなどなく、それは不可能なことであった。
 しかも銀行は、当初は「銀行としては売買契約がなければ融資しませんよ」(着工するなら自己資金で)という姿勢だったのを、「銀行としては、いざというときに転売が容易なように、更地のままにしておいてください」というようにスタンスを変えてきていた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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