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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (56)
経済小説
2011年2月12日 07:00

 結果的にはその後、状況は見る見るうちに悪くなったため、ついにこの物件に買い手がつくことはなかった。
「同社は、竣工後のリーシングを懸念している」との情報が... 20年春の段階では、営業部門はまたこれまでの行動パターンを変えられず、この物件も懇意のファンドなどに提案するばかりであった。そして、「ファンドとしては十分買い意向があるけれども、ローンがつかないので・・・」という報告を繰り返していた。その後、国体通り沿いの物件に続いて、この土地も大手企業系の不動産会社が購入意向を持っている旨の報告があり、期待された。しかし、この会社が10月中にこの土地を買うためには、9月末日までに取締役会の決議が必要であった。9月末までに取締役会で決議してもらうためには、8月中には、物件についてのすべての疑問を解消していただき、取締役会上程の準備を整えてもらう必要があった。そのためには、8月上旬の国体通りの土地の決済後、すぐ商談に入る必要があり、岩倉社長から取り急ぎ直接交渉に入るように指示が出ていたが、仲介会社を通じた商談は遅々として進まず、何ら進捗のないまま8月末を経過してしまった。

 断片的な情報として、「同社は、竣工後のリーシングを懸念している」との情報が伝わってきた。もし、これが確かな情報であれば、そこでトップセールスによるリーシングを強化して、竣工後の家賃収入の目処をつけてしまうという方法もあった。しかし、営業部で取り組んだ方法は、オフィスビルのサブリースをする会社との折衝であった。これでは、リーシングリスク分だけ、買い手が受け取れる賃料が減ってしまう。そのために、買い手が必要とする投資利回りに到達できない可能性が大であると感じた。
 9月に入り、X取締役が懇意にしている地元公益企業の企画課長に物件資料を持参し、同社が展開している高級有料老人ホームの用地として検討してもらった。また、前出の大手偉業系不動産会社のリーシング懸念への回答として、X取締役は、懇意の住宅会社に出店意思を表示してもらうようお願いするなど、懸命の努力をしていた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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