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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (64)
経済小説
2011年2月20日 07:07

<最後の努力>

 先述の部長会での出来事により、私はいよいよ事態は最終段階に入りつつあることを覚悟した。このままでは、明らかに11月14日が法定期限である中間決算の発表はできない。粛々と法的整理の準備を行ないつつ、法的整理を回避する最後の努力をするときであった。

 営業面でも、江口常務は、最後に大手自動車メーカー系商社に対して、建築中の札幌市内の賃貸マンションを売却するところにこぎつけた。この物件は、地元不動産ファンドからの受注による開発物件であったが、同ファンドが5月に破たんし、宙に浮いていた物件だった。比較的仕入が古い物件で、その分仕入価格が安かったのがよかったと思うが、それにしても、物件を売却し、融資を返済しても約1億円の資金上積みを図ることができ、これは後に民事再生に入った後、大いに役立った。

テーブルに乗った場合は、一大広報戦を仕掛け、地元世論を味方につける戦術も考えていた... 資金面では、ひとつは先に述べた私的整理の打診である。その当時の物件の販売可能価格から逆算すると、総額約130億円の銀行融資を一律約3割カット、金額にして約40億円のカットをしてもらえれば、会社を存続し再起を図ることができそうだった。当然、私的整理には3カ月程度の時間がかかるが、いったんテーブルに乗りさえすれば、その後は決算発表を遅延しつつ、投資有価証券等を処分しながら粘って立て直せる可能性があった。テーブルに乗った場合は、一大広報戦を仕掛け、地元世論を味方につける戦術も考えていた。
 私的整理は、創業家の退陣や株式の償却、場合によっては私財の提供も求めるのが通例だが、しかし黒田会長は、それでも事業が存続するのならば、と大賛成であった。黒田会長と岩倉社長の2名で、この地銀の支店長に資料を持ち込み、相談を行なった。この支店長は、先に地元の老舗百貨店が私的整理に至った際に当該百貨店に出向して経営再建に当たった苦労人であるとの情報もあった。
 私的整理に関しては、全銀協や経団連が中心になってまとめた『私的整理に関するガイドライン』、というのがあり、これに沿って本格的なやり方をすると、私的整理の成立まで3カ月程度の期間を要した。そのため、風雲急を告げる今の状況のもとではかなり厳しいのは明らかだった。しかし支店長は、相談した内容を本店の専門部隊に報告し、いずれ、当該部隊が当社や、山陽監査法人にヒアリングを行なうことを約した。その回答予定日は11月上旬であった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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