福岡に来たくなるようなモノがない。目的になるモノがない。だからこそ、パラマウントとUCLAエンターテインメントエクステンションを持ってきてははどうなのか、と日本トレイド（株）の山崎和則社長は語るのである。ほかに対案がないのならば、俎上に載せるくらいの価値はあると思う。加えて山崎氏は主張する。

　「誘致の暁には直接と間接を合わせて12,000人の雇用が生まれます」

　直接的、かつ魅力的な数値である。事実、たとえば東京ディズニーランドでは２万1,000人（(株)オリエンタルランド・正社員2,200名+テーマパーク社員700名+準社員１万8,100名）の雇用が発生している。福岡の地域性や想定している規模から考えて、控えめな数値をあげて１万2,000人だと山崎氏は胸をはる。これだけの雇用を生み出す新産業は、そうは思い浮かばない。たとえば北九州エリア（苅田町）にある日産自動車の九州工場でも従業員3,600人。いかに規模の大きな話しをしているのかが分かる。

　福岡エリアの月間有効求職数（平成22年12月集計。月当たりの求職者数。福岡のみではなく、近郊都市も含む）は５万5,583人だ。職を求める人の５人に１人をまかなえることになる。特殊な仕事も予想できるゆえ誰でも就ける職ではなさそうだが、それでもこれだけのスケールの雇用を生み出せる、そんな計画なのだという。
　ちなみに、この数値は、山崎氏が勝手に言っているのではなく、テーマパークや遊園地の開業前調査の世界的権威ERA（Economics Research Associates）のレポートを根拠にしているのだという。

　働く場がない。企業誘致も思うようにいかない。だったら福岡に暮らす人間が場をつくればいい。そしてお金を潤滑にまわる仕組みを組み立ててればいい。どうせやるなら大きなものをつくったほうがいい。山崎氏の発想は深度が違う。ここを信じることができるか否かがプロジェクトに大きく影響する。大きな言葉や数字はにわかに信じにくい。想像がつかないからである。
　ある心理学者は「人は自分の理解をこえたものが現れたとき、とりあえず否定する」と指摘した。この構図がそのまま当てはまってしまっているように感じられる。考えがおよばない話は、何をよすがにしてよいか迷うもの。それは仕方がない。けれども、拒否反応を示す前に、もう少しだけ「夢」に耳を貸してみるのもいいのではないか。雇用創出、悪い面は何もない。その雇用人数にふさわしいだけの仕事があれば。

≪　（２）　｜　（４）　≫

※記事へのご意見はこちら