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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (67)
経済小説
2011年2月23日 14:52

「この状況であれば、民事再生を出すしかない」

 企業経営者としてもっとも避けたい状況に直面しても、黒田会長はあくまでも経営者として冷静に決断を下した、その瞬間である。
 これで私も、「最悪の話」ではなく「現実の話」として法的整理を進めることになった。

「この状況であれば、民事再生を出すしかない」... これを期に私は、雪崩のように一気に考えを述べた。
「私的整理の可能性は捨てておりませんが、法的整理に進もうと思えば資料の作成などで数週間の事前準備は必要です。私的整理を相談して蹴られれば、もう法的整理にいくしかないので。ですから、そろそろXデーを決めて、準備は始めようと思います。現実的には中間決算の法定期限が11月14日です。法定期限を越えれば、世間に決算を出せないほどの状況なのだと見透かされます。したがって11月14日が、曜日も金曜日なのでちょうどいいと思います。それに、民事再生でいくか会社更生でいくかは、もう少し時間をください。今の私の考えは、会社更生です。なぜかというと当社は銀行の取引先が多いので、会社更生法ならこれらの担保行使をストップできるからです。但し、そこは倒産専門の弁護士からもう少し情報収集をしようと思っております」

 黒田会長は
「私のことはどうなってもいいから、少しでも社員の雇用を維持できるようにしてほしい。特に、この4月に入った新卒の子たちを始め、やる気のある若手を不動産管理事業に移すことで、何とか守っていこう。私的整理のことは、私と岩倉社長で銀行にお願いするから、石川君には粛々と法的整理の準備を進めてほしい」
 と答えた。

 もともと第1四半期決算を受けての経営再建計画のなかで、当社は不動産管理事業と売買仲介の会社として当面をしのぐことをイメージしていたので、仮に法的整理に至ったとしても管理事業を中心に再生していこうという考えは当初からあった。また、これまでの経営再建計画では東京支社は存続することとしていたが、今の状況ではもう無理なのではないかとの認識に至った。
 この後、黒田会長も民事再生後に向けいろいろな策を練り始めた。

 この週の土曜日。黒田会長は取締役全員を本社に集め、11月中旬の法的整理を想定していること、その前に最後の希望を持って地銀に私的整理の申入れをしていることを述べた。翌週明けには定時取締役会が予定されていたので、その終了後、集まった監査役会メンバーにも、同じ考えを伝えた。10月中旬のことである。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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