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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (68)
経済小説
2011年2月24日 15:18

<準備開始>

 私は、Xデーに向けて準備を始めた。
 最初の課題は、弁護士はどこに頼むか、裁判所は東京地裁に出すのか福岡で出すのか、適用法は会社更生法でいくのか民事再生法でいくのか、といった法的整理の入口づくりであった。
 私は弁護士については福岡で頼みたいと思った。たしかに東京の弁護士は、公認会計士と税理士の資格を併せ持っているような人も普通にあり、しかも企業の数が多いだけに倒産専門の事務所も数多い。そして当社より少し先に民事再生を出した福岡の不動産会社は、東京の弁護士を代理人としていた。この会社の場合、経営陣が刑事告訴されるかもしれないというコンプライアンス問題を抱えていたからなのだが。
 また当社クラスの倒産は、福岡地裁では経験がないため「東京地裁に出してください」といわれる可能がある、との情報も入った。

 このような疑問に、普段、不動産がらみの訴訟をお願いしていた福岡の顧問弁護士の安田先生は、長年のお付き合いの黒田さんのことだからと、大変親切に対応してくれた。
 まず私は、安田先生と、社外監査役の弁護士と、総務部長と経理部長を帯同し、安田先生が紹介してくれた九州の倒産法の権威という大分の弁護士の話を聞きにいった。
 安田先生は大分出身で、九州大学を卒業している。お母さん思いで心が優しく、お茶目な一面もある先生だ。特急ソニックが先生の実家に近づくとお母さんに携帯電話で「もうすぐそばを通るよ」と連絡し、沿線に姿を現したお母さんに手を振っていた。また帰りは、博多駅までの下車前途無効のチケットをお渡ししたにも関わらず、実家のある駅で列車を降りていった。

各弁護士の意見を聞いたが、その結論としては... 大分の倒産法の権威をご紹介いただき、そこで私は会社の現状を説明し、いくつかの質問をした。各弁護士の意見を聞いたが、その結論としては、担保権の行使ストップという観点では、現実には会社更生法も民事再生法も大差ない、ということであった。民事再生法の場合は、銀行は、法で規制されることなく直ちに担保権を行使して、物件を持ち去り競売にかけることができる。会社更生法では、担保権(正確には別除権)をもった債権者も、当該担保権の行使が停止されることになる。私は当初、当社の場合は不動産に対する融資が債権のほとんどなので、その担保権を停止し、粗利益を確保しながら不動産を売却するためには、会社更生法が適切であると考えていたのだが、実際には、民事再生でも銀行が即座に担保権を行使することはあまりない、というので、更生法も再生法も大差ない、というのである。
 むしろ、最大のポイントは、黒田会長をはじめとする経営陣が自ら泥をかぶってでも再生をやり遂げる意思があるか否かである、とのことであった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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