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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (69)
経済小説
2011年2月25日 14:48

「黒田会長の意図を確認して決めましょう」
 この場での結論はそうなった。
 福岡へ帰る特急ソニックの車内で私は、いつもにも増してほろ苦いビールを味わいながら、更生法と再生法のどちらを選択するかを改めて検討した。

車内で私は、いつもにも増してほろ苦いビールを味わいながら... まず、経営者が継続してことに当たるかという点である。
 もちろん、黒田会長の意思確認がもっとも必要だが、たぶん会長の性格からして「必要なことなら何でもする」というであろう。それでは、他の役員についてはどうか。会社に対するロイヤルティは人によって異なる。もしかしたら、早々に「ケツをまくる」(逃げ出す)役員も出てくるかもしれない。しかし、黒田会長が先頭に立てば大半はついてくるのではないだろうか。そして、もし逆に更生法を選択して全役員が退陣したとしたらどうだろうか。自分の命運に対する思いも去就した。正直、憔悴する日々を過ごしてきたので、私的には申立と同時にさっぱりと退陣させられてしまう更生法を選択したい誘惑にかられる。しかし役員が総退陣した場合は、会社のことを何もわからない弁護士が管財人として乗り込んできて経営陣の代わりをすることになる。そうなったときに、残る社員は相当振り回され苦労することになるはずである。私の下には総務部長と経理部長がいるからいい、でも実務はともかく方向付けは私がやってきたので、今私が抜けると混乱が避けられないのではないか。不動産管理事業も、新任の役員が部長職をしており、まだその部下が育つところまできていない。ここはただでさえ管理体制が構築途上なのでかなり苦労するのではないか。

 以上のように考え、ここは民事再生法を選択し、各役員はもう少し辛抱して、事業の存続が見えてくるまで頑張るべきと結論した。

 また、資金繰りの観点から考えると、更生法は再生法より多少時間がかかる。特に再生法では、裁判所の許可だけで会社事業の全部または一部を、新たに設立した会社などに切り出すことができる。まあ当座の支払予定を法的整理により棚上げしてしまえば、管理事業で当面の資金繰りをすることはできるので大差はないと考えた。ただ後になってみると、やはり迅速に、債権者集会の決議なしで事業を新会社に譲渡できるという民事再生法の条項は非常にありがたいものであるとわかった。再生法・更生法を活用する最終的な目的は、会社から倒産会社のレッテルをはがすことにあるが、実際にやってみると、このレッテルは少しでも早く、確実に剥がせるほうがいいからである。

 翌週、黒田会長に、先週、会社更生法と提案したのを修正し、民事再生法でいきたい旨報告し了承を得た。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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