第三セクターの機能不全を防止するためには、第三セクターの二面性がもたらす二律背反的な要請を踏まえると、第三セクターにどの程度の、どのような内容の、自律性・独立性を認め、地方自治体がどの程度の、どのような内容の、関与を行なうかについて、明確にしておくことが必要ですが、この判断はなかなか難しい問題です。
私はこの問題については、一般的には、当該第三セクターの形態、事業内容、地方自治体の出資比率などを総合的に勘案して決定すべきであるものの、複雑多様化する行政需要に機動的・効率的に対応するという第三セクターの機能を考慮すれば、事後チェックに重点を置いた関与のあり方を基本とすべきであると考えています。つまり、徹底した業績評価制度などの事後チェックシステムの強化が重要であると思います。
具体的には、まず、(1)事前関与はできるかぎり抑制すること。つまり、経営(事業運営)に係る具体的な判断(意思決定)や事業の遂行のレベルでは、機動性・効率性の確保の見地から、自律性・独立性を尊重することが適切ではないかと思います。ただし、経営の基本に関する決定については、地方自治体の政策との整合性を図る観点から、ある程度の関与は必要となります。
次に、(2)事後チェックはしっかりとやること。つまり、決算や財務の内容、事業活動の結果など上記の経営(事業運営)基づく成果のレベルでは、公共性・公益性の確保(説明責任)の見地から、地方自治体において監視し、指導・監督することが求められます。また、目標管理制度など業績評価制度の導入や第三者機関としての評価委員会の設置や監査法人による評価等を検討する必要があります。
このように第三セクターに対して事後チェックを中心に、しっかりと業績評価を行ない、第三セクターの経営の柔軟性を高めるとともに、やがては第三セクターそのものが民営化、あるいは、その分野にNPOや民間企業が育ってきたら、当該第三セクターは役割を終えていくことが、「新しい公共」「官から民へ」という流れにマッチするのではないかと思います。
<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。
<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援
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