「県民不在」のドタバタ劇に、怒りを感じる県民は少なくないだろう。
任期満了に伴い、4月に行なわれる福岡県知事選挙の前哨戦が白熱してきた。もちろん悪い意味で、だ。見えてきたのは、県政を壟断しようとする権力亡者の存在である。
<「院政」狙う麻生知事>
自民党県連は5日、知事選候補の選考委員会を開き、推薦願が出されていた元県議会議長・蔵内勇夫氏(57)、元内閣広報官・小川洋氏(61)、九州大学教授・谷口博文氏(56)の3人について協議。蔵内氏擁立を決め、武田良太県連会長が公表した。
しかし、選に漏れた小川氏は立候補の構えを崩さず、11日には経済界の一部が小川氏擁立に向けて支援組織「福岡の未来をつくる会」(仮称)を立ち上げるという。「県民党」を標榜しているが、どう見ても胡散臭い。
小川氏擁立に執念を燃やすのは、引退宣言したはずの麻生渡知事。8日には記者会見まで開き、小川氏支援を表明した。妄執である。
京都大学-通産省(現・経済産業省)-特許庁長官。麻生知事と小川氏は、年こそ違えほぼ同様の経歴である。小川氏は麻生知事のコピーなのだ。麻生知事が直系の小川氏を後継に据えることは、即ち「院政」を敷くということ。しかし、県民感情としてこれは許されない。
昨年の町村会事件で、知事の腹心といわれた中島副知事が収賄の疑いで逮捕、起訴されたことでも明らかなように、4期16年に及んだ麻生県政には、長期政権特有の"よどみ"が生じている。腐敗と言っても過言ではない。腐敗した県政を継承することは、県民にとっての不幸に他ならない。
麻生知事の意を受けて、「経済界」なるものが麻生県政の継承を大義名分に小川氏擁立を図ろうとするのなら、それは非常識というものだ。腐敗した県政の継続など迷惑千万。選挙向けに「県民党」の立場を強調するのは茶番でしかない。なぜなら、小川氏の擁立工作に奔走してきたのは、麻生知事や麻生太郎元首相といったレッドカード組と、松尾九電会長ら政治にすり寄る一部の経済人といった権力者たちなのだ。市井の人間などひとりもいない。
小川氏自身、最初は自民党に推薦願を提出、分が悪いと見るや民主党に推薦願を持って行った。主要政党頼みは「県民党」とは言わない。自民党から拒否された途端、経済界や知事が駄々をこねて「県民党」で戦うと言い出したに過ぎないのである。
麻生知事は平成7年の初当選以来、事実上、自民党に支えられて長期政権を築いた。しかし、自らが推す小川氏が受け入れられない事態に「自民党が分裂しても構わない」とまで言い放ったという。当然、自民党内部からは、知事に対する厳しい声が噴出している。「県民党というなら、最初から小川に推薦願など出させなければよかった。(小川氏を)選ばなかった自民党など、どうなってもいいということらしいが、それはルール違反だ。
本来、大所高所から県政発展のために発言すべき立場の人間がやることではない。院政を否定するなら、特定の候補者の支援表明など必要ないだろう。混乱を招いた責任は知事にある。絶対に許さない」(自民党議員)。たしかに、なりふり構わぬ麻生知事の姿勢は異常としか思えない。
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