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全国初、議員立法による生活交通条例~福岡市・行政改革の実態(32)
行政
2011年2月23日 07:00

 全国初の議員提案条例である「福岡市の生活交通条例(公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例)」は、昨年(平成22年)3月の第1回福岡市議会定例会において成立しました。
 少子高齢化、人口減少など「成熟社会」の様相を呈する社会経済状況の変化やモータリゼーションの進展などにより、現在の地域公共交通を取り巻く環境は、非常に厳しい状況にあり、これまでの需要と供給のバランスによる市場原理では地域公共交通を支えることが困難になってきています。

福岡市内 平成14年の道路運送法の改正以後、需給調整規制が撤廃され、中山間部や地方都市の郊外においては、乗合バス路線の体廃止が相次ぎ、「買い物難民」という言葉が広がっているように、高齢者や障害者などの通院や買い物など、生活に必要不可欠な「移動の手段」を奪われる事態を招来しています。
 146万人を超える人口を抱える福岡市においても、平成14年の道路運送法の改正以降、縁辺部では乗合バス路線の休廃止は25路線を数えるに至り、4路線について公費による補助を行っている状況です。
 このような背景を踏まえて、この福岡市の生活交通条例は、国が制定を検討している交通基本法に先駆けて、交通権(移動権)を確立し、生活に不可欠な市民の生活交通をしっかりと守っていくための制度設計となっています。

 この条例の制定に関して主導的役割を担ったのは、福岡市議会の栃木義博議員(民主党)でした。「交通というものは、地域再生の重要な核となるものであり、国に先駆けて地方でぜひ生活交通条例を実現していきたい」という栃木議員の提案を受けて以降、7カ月もの長い間、市長サイドの執行部や交通事業関係者など多方面にわたり、非常に熱心な議論がなされました。
 そして、平成21年12月議会に一度条例案が提案されたのですが、市議会の他会派からいろいろな異論が出され、いったん取り下げられることになってしまいました。その後、会派間で協議がなされ、前述したように平成22年3月の定例議会において、共産党を除くすべての会派の共同提案で再提出され、難産でしたが、賛成多数で可決されました。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第31回「高まる議員立法の重要性」 | 第33回「「交通」の高い公共性」 ≫

<プロフィール>
寺島浩幸氏寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
寺島氏ブログ
・ツイッターは、コチラ


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