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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (52)
経済小説
2011年2月 8日 11:29

<ヤマ場は10月に>

 以上のことから、以下のことが導き出せた。
 すなわち、中間決算は9月末に締めるが、10月20日頃には大勢が判明する。
 そして、当社の資金繰りの鍵を握るのは、10月がリミットの福岡と札幌の大型2物件の売却である。これは、十数億円というボリュームからして、中小会社や個人が簡単に手を出せるものではない。買えるのは大企業だけである。と、すると10月末に売却するにしても、9月の中旬には顧客との売買契約なり、これに準じる合意が成立していることが当然と見られる。この時点で、売買契約が成立していないのに、「絶対に10月中に売れます」などという主張をしても誰も耳を貸さないだろう。したがって、9月中旬までにこれらの売買契約が成立しなければ監査証明は出ることはないであろう。
 と、いうことは10月下旬に入り、会計士が来社して中間の監査に入るときには、すでにまともに中間決算を発表できるか否かは、事実上決定してしまっている、ということである。
 そう考えているときに、会社法務を担当している総務部長より、法的整理についてもそろそろ事前の勉強をしてゆきたい、との申し出があったので、内密に行なうことを条件として、これを了承した。

中間決算を出せない場合の、その前後の展開についても考えてみた... 中間決算を出せない場合の、その前後の展開についても考えてみた。
 中間決算を遅延した場合も、即上場廃止、ということにはならない。もちろん直ちに監理ポストに置かれ、信用は地に堕ちる。しかし、いったん中間決算を遅延しても、その後数十日のなかで大型2物件が売れるなどして、資金繰りが改善したら、そこで決算発表を行なって、監理ポストから生還することは考えられる。
 だが、大型2物件が売れる可能性がなくなれば、そのように粘ることは、いたずらに手元資金を浪費するだけである。調べたところでは、民事再生法は申立するだけでも数千万円の費用がかかる。現在の資金推定でも、10月20日の手元資金は数千万円という水準になりそうである。この水準では民事再生法を申請するための資金もない、ということになる。
 このようなことから、私は、中間決算の締めを前に、真剣に法的整理の検討を始めた。

 また、当社が上場会社として生き残るひとつの可能性は、これはメインバンクを意図的に置いてこなかった当社としては、非常に実現性は低いことではあったが、主要取引行に泣きついて私的整理をすることであった。正直、実現可能性からして真剣な検討に値しないのではないかと思われたが、しかし、後から悔いるのもいやだった。そして、ある不動産を10月に売却できる見込みとなったことで、当社の借入残高トップが、メガバンクから地銀に移る可能性が出てきていた。そして、福岡では、今は三越伊勢丹の100%子会社になってしまった岩田屋が、上場会社の私的整理の成功例として知られていた。このため、私的整理は至急に地銀に持ち込み、もしそれがテーブルに載った場合は、あえて中間決算を遅延しても、上場会社として粘ることには価値があるように思われた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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