かつて、リーマン・ショック直後の08年9月末時点で時価総額7兆5,963億円を誇っていたJ-REIT市場。だが、不動産投資が冷え込んだ影響を反映して、その後は縮小傾向をたどり、底を打ったとされる09年11月末には2兆5,253億円にまで減少した。今年2月9日時点では3兆7,014億円にまで戻したが、果たして今後、国内の不動産投資市場はどのようになっていくのか。福岡のポートフォリオデータを1つの指標として考察したい。
<九州新幹線・博多シティの開業を控えて>
福岡リート投資法人は2月7日付けのニュースリリースで、福岡地所が保有する劇場部分を除くキャナルシティ・B(ホテル、店舗、駐車場部分)の所有権を287億円で取得すると発表した。予定日は今年3月2日、売主は(有)シーシーエイチブリッジで、同投資法人が優先匿名組合出資を行なっている特別目的会社(SPC)。計画によれば、投資口の新規発行(1万6,000口)により約90億円を調達し、このうち2,400口を福岡地所に販売、残りは一般投資家に売り出すという。
今回の取得目的として同社は、3月に控えた九州新幹線全線開通およびJR博多シティの開業による、博多都心への九州一円からの広域集客に備え、より迅速な意思決定が可能な体制を早期に構築するためとしている。
攻勢の博多・迎え撃つ天神という構図ができつつあるなかで、福博の間に位置するキャナルシティ博多の存在意義がますます問われてくることは間違いないだろう。約110億円を投じて建設中の第2キャナルシティも、核テナントはアパレル系で、阪急などとの競合は当然避けられない。
ただ不動産投資という観点から見れば、福岡に数あるリートのポートフォリオのなかでも、キャナルシティはNOI(賃料収入による純収益)が9億1,200万円とずば抜けて高い(10年8月期末時点、ビジネスセンター除く)。稼働率も落ちることなく、安定した収益物件となっている。
しかし、それも各テナントが収益をあげているからこそ成り立つもの。4月以降、急激に収益が落ち込むということは考えにくいが、それでも劇団四季が売上不振で2010年2月に福岡シティ劇場(現・キャナルシティ劇場)から手を引いたという不安要素もあり、必ずしも楽観はできない。
【大根田 康介】
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