1月19日に空振をともなった噴火が発生して以来、今なお断続的に噴火が続く新燃岳。宮崎市や都城市、およびその周辺地区には大量の火山灰が降灰し、農作物の破損や成育不良、交通機関の一時機能停止、観光地の一時閉鎖など、地元住民の生活に大きな被害を与えている。
また、その降灰した火山灰自体の処理についても地元住民に重い負担を強いているが、「セメント製造時の原材料に利用できるのではないか」と、火山灰の再利用の可能性について業界関係者から話が出ている。
社団法人セメント協会によると、「理論上は利用できる可能性はあります。2000年7月の三宅島の噴火災害時に、火山灰のセメント材の使用検討を東京都が実施しました。しかしながら火山によって化学組成が異なるので、コンクリートに悪影響を与えるものがないか調査が必要であり、すぐ使えるわけではないようです」と回答。
当時の分析資料によると、火山灰混入率43%でコンクリート製品を製造したという。当該製品は、ひび割れ、あばた、気泡ムラなどは見られず、圧縮強度や曲げ破壊強度もJIS規格値をクリアしたという。そのため、火山灰をセメント材に利用した場合の実用性においては、耐久・施工・力学特性面などを十分にクリアできる可能性が高い。
しかし一方で、火山灰には火山性ガラスが含まれており、アルカリシリカ反応を起こす可能性も否定できないという。そのため、アルカリ骨材反応試験を実施したうえで、利用方法を決定しなければならない。また、現地から各製造工場への輸送コストも莫大となるため、採算面における課題もクリアしなければならない。
火山灰のセメント利用についてはさまざまな課題が多いが、実現できるならば災害復興の一助となることは間違いない。
かつて、古代ギリシアのパルテノン宮殿、ローマのコロシアムなどの歴史的建築物には、火山灰が使用されていたという。先人の英知を、災害復興のためにぜひ役立てていただきたい。
【河原 清明】
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