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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (74)
経済小説
2011年3月 2日 10:58

 サブリースをすべて一般管理に切り替える。この戦略を実行するために、キーワードを「家賃と敷金の逆ザヤ」とし、これを裁判所への申立書類やニュースリリースなどに記載するようにした。
 対オーナーの問題については、黒田会長はいつも、
「これまで当社は身を削って相当額の賃料補填をしてきている。ほとんどの物件で入居率はそんなに悪くない。だから思い切って一般管理に切り替えてもらおう。私が知っているお客様には、私も自ら出て行って説明する」
 といって、真正面から臨む姿勢を崩さなかった。

そこでオーナー様には、民事再生を申し立てた直後から順次... そこでオーナー様には、民事再生を申し立てた直後の11月15日から順次、説明会を開催し当社が裁判所の管理下に入って12月以降の家賃送金は安心していただけることを説明し、そのためにも一般管理に切り替えて管理継続の合意書に捺印いただくようお願いすることとした。そして11月14日に裁判所の保全命令が出て、11月20日に予定していたサブリース物件のオーナーへの送金ができなくなるが、それはすでに差し入れている敷金から差し引いていただくようお願いすることとしたのである。
 Xデーを11月14日にすることを決意した黒田会長の判断根拠のひとつにこの問題があった。11月20日のオーナーへの送金ができなくなるため、なるべく各オーナーが早くそれぞれ銀行返済などの資金繰りができるよう、早めに民事再生を出し事実を明らかにすることが必要と考えたのである。

 Xデー後のことについても弁護士と打ち合わせし準備を進めた。
 Xデーのアクションは民事再生の申立である。申立は当日午後、黒田会長と私と弁護士で裁判所に出向いて行なうこととなった。そして申立が受理されると、裁判所は保全命令と監督命令を出す。
 保全命令とは、会社に対して今後、しばらく金品を支払ってはいけませんよという命令である。これは申立に伴って債権者が殺到し、現金や商品を持ち去ると公平な弁済ができなくなるため、そのような火事泥棒的な行為をストップするための命令である。
 監督命令というのは、裁判所で当社の民事再生の遂行を監督する弁護士を選任して、今後、監督しなさいよ、という命令である。監督委員は裁判官に代わって再生会社を監督する。民事再生は営業継続を前提とした制度であるため、銀行口座などの管理も継続して会社で行なうが、それでも何でも自由にしてよいわけではなく営業外の取引(例えば固定資産の処分など)は、今後は監督委員の許可を得て行なうことになる。

 Xデーが過ぎると、次の節目は開始決定である。
 これは、いわば民事再生の正式決定のようなものであり、今後の債権届出や財産評定は全て開始決定日時点を基準にして行なわれる。なお民事再生を申立てた後、一定の秩序を持って営業が継続され、特定の債権者に弁済を行なってしまうなどの行為がなければ、監督委員が開始決定するべきとの意見を裁判所に上申し、これを受け裁判所が開始決定を出す。
 倒産すると債務をカットできる、ということは多くの人に知られているが実際にカットするのは、この開始決定日時点までの債務である。このため、会社は開始決定日時点で決算を行ない債権債務確定しなければならない。決算といっても、会社更生法のように事業年度を切替えることは行なわれないので、月次の締め程度のものである。と、いうことは、開始決定日を月初にすれば、通常の月次の締めと同じ作業で済むことになるので、その旨日程を考慮していただき、開始決定日の予定は12月1日としていただいた。

 民事再生後の当社の事業戦略は、以上のとおり固まった。
 しかし以上のような収益改善を達成したとしても、不動産管理事業で年間に稼げる純利益はせいぜい数千万円であると考えられ、不動産販売事業で残した巨額の負債を年間数千万円の利益のなかから分割弁済していくことは現実的には難しかった。そのため不動産管理事業の収益性を高めた上で、これをスポンサー企業に売却し、その代金を持って一括で債権者に弁済を行なうスキームが現実的と判断した。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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