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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (76)
経済小説
2011年3月 4日 11:55

<申立当日>

 それからXデーまではあっという間だった。頼りにしていた地銀からは、Xデー前日に「私的整理には協力できない」との連絡があった。私自身は粛々と準備をしていたところだったので驚きはしなかった。黒田会長からも、粛々とことを進めようとのひと言があったのみである。
 申立の数日前には、黒田会長と森永先生、土井先生ほかと同行し、地裁の審尋に出向いた。裁判官および書記官より民事再生の経緯などについて若干質問があり、また森永先生は書記官と申立書類の作成についてこまごまとした打ち合わせを行なってくれた。
 申立前日には、申立と同時に発送する文書の封入作業が佳境となり、間に合わないと考えられたため、やむを得ず社員全員で対応した。

私自身は粛々と準備をしていたところだったので... 当日は午後1時30分に裁判所に出向き、改めて裁判官による審尋が行なわれた後、申立書が受理され、即日、保全命令と監督命令が発令される運びとなった。
当日の午前中、証券取引所に提出する書類の点検をしていると、黒田会長の部屋に呼ばれた。行くと
「これから自宅に帰って女房に話をしてくるけん」
 という。会長の自宅は、会社からはタクシーで僅か5分という近所である。しかし、当日午前にきちんと奥様に話をしようとする会長の人柄には頭が下がる思いだった。

 午後になり、会長と裁判所に同行した。前回の審尋から若干追加のやり取りがあり、申立書は正式に受理された。
 債務者が民事再生手続の開始を申立てると、その場で当社に対して保全命令が出された。これにより開始決定までの2週間、会社は若干の例外事項を除いて、昨日までに発生した債務は弁済および担保提供は原則できないことになった。これは倒産により殺到する債権者の中で、強引に金品を持ち去ろうとする者があれば、それを制止する根拠にもなる。債権回収を無秩序なままに任せると、強引な債権者だけがより多くの回収をはかり、善良な債権者の間での不公平が生じる恐れがあるため、債務者が民事再生を出した以上は、そのようなことは認めませんよ、というような意味がある。当社の場合は、民事再生の要因のひとつとなったサブリースの家賃についても保全命令が出たため、10月20日に予定していたオーナー送金約3億円をストップせざるを得なくなった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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