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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (77)
経済小説
2011年3月 5日 07:00

 同時に裁判所は、今後、債務者が民事再生手続きを進めることを監督する監督委員の弁護士を選任し、その弁護士に監督命令を出す。この監督命令のなかには、債務者が財産の譲受や処分を行なう場合、それが日常業務の範疇外のものであれば監督委員の同意が必要である旨記載してある。民事再生は、あくまでも倒産会社が従来の経営陣がこれまでどおり自主的に日常業務を行なうことを原則としており、日常業務外のことを行う場合は、監督委員の許可が必要、ということになる。
 会社が倒産すると、弁護士が乗り込んできて会社の印鑑も取り上げられ、弁護士が管理する、というようなことを伝え聞いていたが、民事再生の場合は倒産後も自社で銀行口座を管理していくということになり、管理担当として私自身の責任が重大である、思った。

裁判所から出て、会長といっしょに裁判所裏の遊歩道を歩いた... 午後2時30分頃、申立が済んだ。時を同じくしてニュースリリースが出され、DKホールディングスの倒産は、即座に市場に伝えられた。思えば平成12年11月14日に当社は上場し、そのちょうど8年後の同じ日に倒産したのであった。
 裁判所から出て、会長といっしょに裁判所裏の遊歩道を歩いた。小春日和の午後で、季節はずれのモンシロチョウが花壇の花に止まるのがみえた。青空との対比が美しい。

 会長は深呼吸した後、いつもと変わらぬ口調で言った。
「終わったね」
「とりあえず、済みましたね」
 私は答えた。
「もう掲示板に出とう」
 会長は携帯電話を見ながら言った。ザラ場での倒産リリースとなり、ストップ安となっている。もう株価に一喜一憂することはなくなるのだ。

 大正通りまで出て会社に帰るタクシーを拾った。そのタクシーの運転手は偶然にも、もと当社の取引先の社員で、いまはタクシーの運転手をしている、という方だった。
「あいかわらず不景気のようですねえ」
 と運転手はお決まりの世間話のように言った。
「ええ...いま、会社が仕舞えてしまった」
 会長は、しんみりと答えた。しかし一呼吸間を置くと
「これから、K不動産にお詫びにいくから、石川君はその後帰って」
 と、キビキビした口調で言った。会長は早速、頭を切り替えて親密取引先の結束固めに動こうとしていた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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