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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (78)
経済小説
2011年3月 6日 07:00

 会社に帰ると、打ち合わせどおり各階の事務所入口に張り紙がなされている。当社が保全命令を受け、当社より金品を持ち出したりすることは禁じられている旨の張り紙である。しかし、不幸中の幸い、直ちに債権者が殺到してきている様子はなかった。経理部長および次長は、同じく打ち合わせどおりすでに各銀行への報告に回っている。
 行き違いとなり、私宛に尋ねてきた銀行担当者もあった。
 私は、これだけの困難な状況のなかでも銀行や投資家からの問い合わせに対しては、誠心誠意対応してきたつもりである。相手方にも、時に立場を超えて真摯な対応をいただいてきた。しかし民事再生準備のことは、いかに親密な相手に対しても口外することは許されない。申立の数日前、各銀行に経理の担当者を回らせて、預金を借入金と相殺されるのを防ぐため借入のない銀行への預金の移動を行なった。そのときも、異変に気づいて飛んできた銀行担当者に対して
「いや、近くゼネコンへのまとまった支払があるものですから」
すでに当社の美人広報より17時開始の記者会見の案内を... と、ごまかさざるを得なかった。その同じ担当者が、民事再生の報に接し支店長に帯同して事情を聞きにきた。
 私は、土下座する気持ちで
「あの時は本当のことを申しあげられずすみません」
 と頭をたれるしかなかった。それに対し担当者は
「お気持ちはわかります。これにめげずに頑張ってください」
 と激励してくれた。私は、今後の再生計画のなかで、少しでも多くの弁済原資を確保するために注力することを誓った。

 その後、私は自席に着き、銀行やマスコミからの電話問い合わせに対応した。もっともマスコミに対しては、すでに当社の美人広報より17時開始の記者会見の案内をしてあった。当社は日常より、取引所が運営するTD-NETに加え、地元の経済記者クラブへの投函と記者クラブに入れないマスコミ(雑誌、信用調査会社など)へのFAXを常にしていたので、私もマスコミ対応には戸惑いはなかった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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