心の病の代表格として知られる現代の病気・うつ病。気分障害の一種で、不安、焦り、恐怖などにより頭がボーっとしたり、不眠症になることなどを指す精神疾患である。厚生労働省が3年に1度まとめている「うつ病など患者数」によれば1993年の統計で43.3万人、99年で44.1万人となっていたが、2002年より71.1万人に急増し、その後、05年に92.4万人、08年には104.1万人を突破した。統計が始まった93年より15年で倍以上に膨れ上がった患者数。それだけ人々が悩みを多く抱く時代になったのかもしれないが、その数の増え方については疑問が残る。
また、うつ病と自殺の因果関係を指摘する声も多いが、これについてははっきりとした確証はない。福岡県内のとある商社に勤務する30代のAさんは昨年、とある事から心療内科に通った。Aさんが心療内科に通ったキッカケは親友の自殺がキッカケだった。「友人を助けてあげれなかったことに悔いが残りました。ショックで数日間、眠れない日々が続きました。不眠症を解消するために心療内科に足を運びました」(Aさん)。
Aさんの訪れた心療内科は患者数がとても多い人気のクリニックだ。多い時は、午前中の数時間に30名~40名近くが診察待ちとなる。Aさん本人は不眠症を解消する薬を貰えればという軽い気持ちで訪れたが、先生が下した診断結果は「うつ病」だった。しかも、たった5分間という短いカウンセリング時間のなかで、驚きを隠せぬまま、ただ呆然と先生の指示に従ったのだった。
【矢野 寛之】
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