夢を実現するためには投資が必要だ。ソフト面を変更してより利益が得られる仕組みをつくるというのならば、そこまでの反対はないだろう。小さな金額で大きな利益を生む、てこの原理のような投資であっても、ハードルはそこまで高くならない。このパラマウント誘致計画の一番大きなネック、それが多額のイニシャルコストなのである。
金額が大きくなればなるほど、人は慎重になるし、保証を求めるもの。これは当然の心境である。パラマウントのテーマパークは福岡の将来を決定する可能性を秘めた大きな事業である。広い敷地も用意しなくてはならないし、アトラクションの設置もしなくてはならない。周辺インフラの整備も必要だ。その金額が大きく膨らむのは想像に難くない。
2003年に行なわれた調査の資料によると、用地とインフラ整備に約210億円、建設費用に約614億円、設計や許認可、財務コストなどの目に見えない費用で約255億円が想定されている。合算すると開発予算はおよそ1,080億円となる。
開発にかかる費用が1,080億円。この数字の大きさ、イメージがしにくいかも知れない。どれくらいの規模なのか分かりやすくするためにいくつか比較してみる。福岡市の主な財源である市税がおよそ2,600億円。福岡の代表的な交通機関を有する西日本鉄道の売上が平成22年3月期単独決算で1,280億円。天神のランドマーク、岩田屋三越の売上が22年3月期決算で913億円。1,080億円の開発予算というのは、福岡の市税の半分弱にあたり、西鉄の売上と岩田屋三越の売上の間くらいの金額に相当することになる。紛れもなく地方都市福岡にとって超大型プロジェクトになるのだ。
なお、これは計画の一部であることも付け加えておかなくてはいけない。誘致しようとしているのはパラマウントのテーマパークだけでなく、UCLAエクステンションもあるのだ。1,080億円というのはパラマウントの分だけであり、後者の数字は入っていない。計画を実現するためには、さらに大きな投資が必要とされるのである。
この数字を見て絵空事と思う方が、どちらかというとまともな思考なのではなかろうか。どれだけ壮大な計画があってもスタート資金がなければ始まることはない。どうやって資金を集めるのか。
【柳 茂嘉】
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