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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (81)
経済小説
2011年3月 9日 13:29

<終礼と解雇通知>

 記者会見は、マスコミなど50名が当社の小さな会議室に密集するなかで18時に終了した。その後、社員全員を集め、同じ会場で終礼を行なった。ここでも黒田会長が冒頭より社員に対して、当社が民事再生に至った経緯を説明した。当初は淡々と説明を進めていった黒田会長だが、
「何とか、全員で向こう岸までたどり着きたかった。しかし、このようなことになり、DKホールディングスはもはや豪華客船ではないため、一部の人には船を下りてもらわなければならない。特に、希望をもってDKホールディングスに入ってきた新入社員には、このようなことになってしまい...本当に申し訳ない...」
 という段になり、ついにこらえきれずに泣き崩れてしまった。

面談した社員は多くが女性で... 次に、岩倉社長から、社員についてはこの後、各担当取締役が面談し解雇もしくは継続雇用を伝えること、基本給を10~30%削減すること、扶養手当・社宅手当・携帯電話手当などは廃止することなど、事務的にリストラ策の通達が行なわれた後、散会した。
 その後、各取締役より事前に岩倉社長と各取締役が協議してまとめたリストに従って全社員を面談し、解雇または継続雇用の通知をすることとなっていた。
 私は民事再生手続の過程を通じて、これほどつらかったことはないと思っている。
 管理本部長として総務部・経理部、それに本来は直属の部門ではないが、実質的に面倒を見ていた経営企画室・内部監査室を含めると22名の部下を持っていて、その半数に対して解雇通知を渡さざるを得なかった。私は総務部に関しては、人数も少なく総務部長による部下掌握が十分であったと判断していたので部長に任せ、部下掌握に一抹の不安があった経理部と部署長が空席になっていた経営企画・内部監査の各室については、私自身が一人ひとりの社員を呼び通知した。

 面談した社員は多くが女性で
「いま一番辛いのは石川常務なんですから、私は解雇であろうと継続であろうと指示に従いますよ」
 と言ってくれた人もいた。また、「戦力として残ってほしい」と頼んだ社員は
「期待どおり、頑張ります」
 と言ってくれた。広報や内部監査というように、上場廃止後は不要となる職務に従事する社員については、本人たちも既に運命を覚悟し次のステップに向けて気持ちを切り替えてくれていた。黒田会長より個別に内示を受けており、それを私に報告していた社員も、例の美人広報など複数人いた。また、本人がもともと近々の退職を考えていたような社員を今回優先的に解雇したこともあり、結果的には早々に通知を終えることができた。
 そして私は、改めて部下に恵まれたことに感謝した。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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