<家電量販店業界の現状>
まず、家電量販店業界の現状についておさえておきたい。2009年度における業界規模は5兆7,361億円(主要企業16社の売上高合計)となっている。03~06年度の間は拡大傾向にあったが、07~09年度にかけては横ばいである。
リーマン・ショック以降は消費が冷え込み、百貨店などは苦戦を強いられたが、家電量販店は何とか持ちこたえている。その要因として挙げられるのが、09年5月に始まった「家電エコポイント制度」と今年7月24日に控えた「地上放送デジタル化」(地デジ化)だ。
薄型テレビ、冷蔵庫、エアコンに対してほかの商品やサービスと交換可能なポイントが付与されるのが「家電エコポイント制度」。たとえばベスト電器(以下、ベスト)であれば、エコポイント2,000点に対して2,000円分の商品券、30,000点であれば20%アップとなる36,000円分の商品券と交換できる。「地デジ化」による薄型テレビへの買い替え需要の高まりも相まって、各社とも売れ行きは好調だった。
しかし一方で、業界内の業績は明暗が分かれている。10年3月期決算(ベストは2月期、ビックカメラは8月期)によると、売上高が前年比でケーズホールディングス+13.0%、ヤマダ電機+7.7%、エディオン+2.1%だったのに対し、ベスト電器▲7.1%、ビックカメラ▲6.6%、コジマ▲4.7%を記録。今年、カンフル剤として家電需要を押し上げたふたつの要因が終了するため、今年秋以降は売上が落ちることが懸念されている。新規開拓と売上高維持のため、酒類、スポーツ用品、メガネ、電気自動車、太陽光発電装置、書籍など家電以外を扱う店も増えたが、やはり売上高の源泉は家電販売であることは動かしようがない。
これから合従連衡が進む可能性は高い。08年6月のビックカメラ(以下、ビック)によるベストの持分法適用関連会社化(株15.1%取得)がここ最近の大きな出来事だったが、肝心のベストが経営陣総入れ替えの経営再建をするハメとなった。またビックも、不動産流動化に関する不正会計処理などで09年1月、一時東証の監理銘柄に指定されたことでつまずき、ビック―ベスト連合はヤマダ電機(以下、ヤマダ)に対抗する勢力とは成り得なかった。
さらに海外、とくに中国の家電量販店の進出も注目される。09年8月、経営再建中だったラオックスは、中国で2位、世界でも5位に入る蘇寧電器の傘下に入った。今後もこうしたM&Aのケースは考えられる。
世界進出という点では、ベストが一歩先を行っている。すでに韓国、香港、台湾、マレーシア、シンガポール、インドネシアに店舗を出しており、ほかの家電量販店ではようやくヤマダが10年12月、中国・瀋陽に出店した程度である。ただ、これだけ国内市場が飽和状態になってくれば、追随して海外進出を検討する企業も今年から来年にかけて増えてくる可能性は高い。
【大根田 康介、流通取材班】
COMPANY INFORMATION
代 表:小野 浩司
所在地:福岡市博多区千代6-2-33
設 立:1953年9月
資本金:318億3,278万円
年 商:(10/2連結)3,456億1,900万円
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