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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (87)
経済小説
2011年3月16日 11:00

 人事リストラは申立後3日でひと段落した。
 存続予定事業をつかさどるマネジメント部では中堅幹部を失ってしまったことは大きな損失であったが、ひとまずは翻意した営業社員の配置転換で戦力の中核を構成した。またマネジメント部を辞める社員のなかにも、会社の事情を承知しているため3月までアルバイトとしての勤務に応じてくれた者もあった。総務部長も、部下の新卒の女性2名をマネジメント部に転出させた。
「物件の鍵と入居者の契約書を返せ、といって聞きません... 部下2名を出すに当たっては私と総務部メンバーでささやかな送別会を開き、ふたりには、もしどうしても理不尽なことがあったらひとりで抱えずに私に相談するようにいったが、今まで何ら相談はなく元気にやっている。牧田・稲庭取締役がまっとうに指導すればこそのことであろう。

 申立後、裁判所はしばらく当社の様子を見て無事再生ができそうと判断したら、「開始決定」を出す。今後、当社の民事再生手続きを正式に始めますよ、という意味である。
 この間は毎日のようにミーティングを重ね、発生するクレームに対応していった。
 役員を集めての会議中、営業担当の課長がやってきた。
「いま●●物件のオーナーが来社して、物件の鍵と入居者の契約書を返せ、といって聞きません。もう1時間も粘っているのですが、返していいですか?」
 私は答えた。
「いま、裁判所から保全命令が出ていて、入口にその旨貼ってあるはずだ。そのオーナーがいわれることは保全命令に違反するので受けることはできない。オーナーが犯罪者になってしまうので、その旨説明して帰ってもらうように」
 いくつかの物件で、オーナーが入居者に対して新たに自分の銀行口座に家賃を振り込むよう案内してみたり、「預かっている鍵や入居契約書を返せ」と執拗に要求したりするオーナーがいる、などの情報が入った。私は、今後解約などの対応はとっていくにせよ、今は混乱期であり、その混乱を防止するために保全命令が出ているため、オーナーを犯罪者にしないためにも多少乱暴でも守るべきものは守っていくべきと考えていた。それに今妥協してしまうと、向こう数カ月の苦しい戦いに対応できないのではないかと懸念された。そこで私は、保全命令に背いて「鍵を返せ」といってくるような方には厳しく対応するよう指示した。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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