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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (88)
経済小説
2011年3月17日 17:04

 このような状況を受け、私は、今後の当面の役員の役割分担と目標を起案した。

[岩倉社長、江口常務、稲庭取締役]
 当面はオーナーとの契約切替えに専念する。その後は不動産の処分に取り組む。なお、オーナー担当の責任者は稲庭取締役とし、他の取締役はプロジェクトメンバーとする。

[中井常務]
 不動産管理事業の継続のために必要な取引先をつなぎとめる。また、オーナーとの契約切替えを応援する。その後は、建築中現場の再開に向けた調整に当たる。

[牧田取締役]
不動産管理事業のうち対オーナーと対取引先以外のすべてを推進する。

[石川]
 民事再生手続の推進、事業譲渡交渉、進捗管理を行なう。当面は、銀行口座の確保、集金代行業者の確保などに当たり、その後、事業譲渡などに取り組む。

 黒田会長からは、無給で事業譲渡の候補先へのアプローチおよびオーナーのつなぎとめに自ら当たりたいとの決意が改めて示された。
 このようにして、当面の役割分担を決定した。
 取締役は経営責任を示すため40~70%の報酬カットに応じ、かつ、11月20日の役員報酬は一般債権者と同様に棚上げとなった。しかし黒田会長が先頭に立つ姿勢を崩さなかったため、皆責任を持って業務に当たった。ただ、先日敵前逃亡したX取締役だけは、会議中もすべてに他人事のような表情をしており、これでは早々にけじめをつける必要があると私は感じていた。

私は今後の当面の役員の役割分担と目標を起案した... その後、私は、民事再生に絡んで弁護士と相談する場合の原則について決定した。私を含めて民事再生法の経験はなかったため、日常業務の遂行と民事再生法がどのようにクロスオーバーするのか皆目検討がつかなかったからである。弁護士からは、再生推進室という組織を作って、それが中心になって対応していただきたいとの説明があった。しかし、私は、不動産業という業態の特殊性および事業ごとの法務の専門性の高さゆえ、各部門の広範な業務に精通した人材は存在しないため、再生推進室という部署を取締役会と別に設けることは難しいと考えた。強いていえば、今後発生する認否書作成などの作業レベルの仕事は、経営企画の課長に任せることが可能だが、この人もまだ社歴が浅く、会社全体について精通しているとまではいえなかった。このため民事再生と現業のすり合わせは、各担当取締役レベルでないと無理と判断した。そこで、弁護士との相談窓口は原則各担当取締役として、各取締役間は随時情報共有を行ない、全体の進捗把握と大きな方向づけは私が対応するよりほかにないように思われた。そこで、私はその旨弁護士の森永先生と相談し、了承を得た。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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