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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (89)
経済小説
2011年3月18日 14:31

その後、11月下旬のある夜... その後、11月下旬のある夜。代理人の森永先生、土井先生、安田先生ほかを会社に招き、各取締役との顔合わせと当面直面する課題についての質疑応答を行なった。最初の頃は、各役員それぞれ弁護士に投げる球の大きさも、現状の整理状況も、優先順位の判断の巧拙も異なり打ち合わせは難儀を極めた。私は、弁護士や会計士といった士業の先生と打ち合わせをする際には、必要になりそうな資料を事前にコピーして準備したり、疑問点を箇条書きにしたりすれば効率的であることを経験的に知っていたが、営業系の役員のなかにはこれら物事の整理が苦手な役員もおり、当面は千鳥足で進まざるを得ないと思った。主務担当の森永先生や不動産処分を主に担当いただいた安田先生には、実に辛抱強く対応していただいたと思う。

 この弁護士との顔合わせの際、森永先生より「管理事業の委託先などで大切な取引先への支払は、保全命令の例外を活用して11月中に行ってください、また、11月までに発生した債務で12月以降に支払う必要のある金は、共益債権化する必要がある(開始決定以前の原因による債務は再生債権となり、後日、再生計画に基づいてカットして弁済するのが原則。共益債権は、支払える債権のことを指す)ので報告してください」との話があった。12月1日に開始決定となると、それ以前の債権は全て棚投げとなってしまうからである。しかしその後、各部から具体的な要望はなく、数日のなかで、各部署が必要な支払はこれとこれですと申し出ることは不可能であり、ましてそれに優先順位を付けてください、とお願いすることは不可能であったため、11月20日に予定していた定時支払の内容をそのまま共益債権化の対象とした。
 このことが、後に、支払えるといっていたものが支払えなくなる、というようなトラブルを惹起した。

 私も、その時点では理解度が薄く、先生方にはもう少し懇切に説明していただいたらよかったと不満を持っていたが、今にして思えば専任の「再生推進室」を設けなかったため先生方としては説明がしづらかったのであろうと想像している。それに社内の状況として、営業本部長などが責任を持って支払の優先順位をつけることは難しかったため、もしこの「開始決定までに共益債権化」することで取引先に支払が可能であることを懇切丁寧に弁護士が説明していたとしたら、個別にこれを支払いたい、という話が殺到して、その後は収拾がつかなくなっていたようにも思う。今にしてみれば、このような支払手法を活用することで、事業を継続するために必要不可欠な取引先に対して必要な支払を行なえるので、これはうまく活用すれば民事再生に伴うストレスを大幅に減らせると思った。後に会社更生法の適用を申請した日本航空は、まさにこのやり方を最大限に活用し、通常の商取引の債務はすべて共益債権化することで運行への影響を最小限にしたのである。
 私自身も民事再生法のことを知るにつれ、これは何と強行的な法であろうかと思ったものだが、実際問題として債務不履行を整理するためには、強行的でなくてはならず、そのための法的整理なのである。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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