ベストのコンプライアンス問題でもっとも記憶に新しいのは、「心身障害者用低料第3種郵便物制度」を悪用したことだろう。ダイレクトメール(DM)約570万通を不正に発送し、約6億4,000万円の郵便料金を不正に免れたとして、郵便法違反の罪で10人を起訴された。
当時社長だった濱田孝氏は、事件発覚時の記者会見で「(DM料金120円が最低8円となることに関して)博報堂(および子会社の博報堂エルグ)側から"法的に問題ない"として話が持ち込まれ信用した」と述べている。とは言え、当時の事情を知る人物に言わせれば「最終的には有薗―濱田ラインで決定されたことは疑いようがなく、博報堂だけに責任を転嫁するのはおかしい」という。
事件の詳細に関しては、方々で報じられているため割愛するが、「この事件によって当社の多くの社員が傷ついた」(博報堂社員)。また、「家電に詳しくないため、店員が多くて商品説明をしっかりしてくれるベストを以前はよく利用していた。しかし、障害者DM問題でニュースになってから何となく信用できなくなり、近所のヤマダ電機を利用することが増えた。ヤマダはポイントも良いので便利」(30代女性・会社員)といったように、関係者のみならず、一般消費者への波紋も決して小さくなかった。
そんな同社だが、実はいま、ひとつの裁判案件を抱えている。京都市下京区に本社を置くピーシーアシスト㈱(代表:下坂光、以下ピーシー社)との裁判だ。原告はベストで、被告のピーシー社に対して営業区画を明け渡すように請求しているものだが、以下流れを追っていこう。
07年11月20日、当時全国に75拠点でパソコン教室「Winスクール」を運営していたピーシー社とベストが業務提携すると発表された。もともと店舗内でパソコン教室を運営していたベストだが、「人材難や均質なサービス提供などの問題を解決するため」(同社IR)提携に至ったという。1号店はベストのNew太宰府店に同12月1日開店し、08年4月までに20店舗、年間で50店舗の開設を目指していた。
【大根田 康介、流通取材班】
COMPANY INFORMATION
代 表:小野 浩司
所在地:福岡市博多区千代6-2-33
設 立:1953年9月
資本金:318億3,278万円
年 商:(10/2連結)3,456億1,900万円
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