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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (91)
経済小説
2011年3月20日 07:00

 その後の再生計画の大きなスケジュールも申請時点で裁判所から提示されるが、まず状況が落ち着くとともに開始決定日時点の当社の資産の評価(財産評定)と負債の確定作業(認否書作成)に着手してゆくことになる。財産評定の作成は会計事務所などに委託する。認否は弁護士がやってくれるが、作業については経理部などが相当の負担をもって取り組まねばならない。これらの結果を裁判所に提出することをもって、再生計画の対象となる債権債務がある程度確定することになる。債権債務を確定させたら、次のステップは再生計画(実質的には弁済計画といったほうが分かりやすい)の案を作成し、裁判所に提出することである。これも代理人弁護士が提出するが、計画の内容自体は債務者自身で経営計画的な考え方で組み立てていくものである。再生計画のなかには再生債権を何パーセントカットするかも盛り込まれるが、それも会社でそれまでの事業計画を立てて見積もる。
 これを裁判所に提出し、審査のうえ受理されると、裁判所がこの再生計画案と債権者集会の召集通知を全債権者に発送する。この債権者集会で、議決権(再生債権額)基準と頭数基準でそれぞれ過半数を得られれば、再生計画は認可され、ここで初めて債務者は一定率の債務免除を得られ、残りの債務を配当することとなる。

民事再生においては、存続する事業を切り出し... 民事再生においては、存続する事業を切り出して、既存の他社や、他社が出資する新設会社などのスポンサー企業に譲渡する、いわゆる事業譲渡が頻繁に用いられる。もちろん、事業譲渡を用いずに、既存の法人格を維持しながら事業を継続し、毎年の収入のなかから予定した額を弁済していく、という再生計画も多い。しかし、再生会社というレッテルを貼られたまま営業を続けるのはハンディとなることなどから、他社への事業譲渡によって事業の存続を図るケースが多い。この場合、再生計画のなかに、事業譲渡を行なう旨を定めることで実施することもできるが、民事再生法の場合は再生計画の認可を待たず、事業譲渡のみを裁判所の許可を得て実行することができる、という恩典がある。この恩典の主旨は、会社が倒産した場合、事業価値はブランドイメージの低下や現場の混乱から顧客離れなどにより急激に毀損する傾向にあることから、少しでも短時間のうちに事業譲渡を実行することで事業価値の毀損を最小限にできるようにすることにある。そうすることで事業売却によって得られる資金も増え、雇用を維持できる社員の人数も増え、残務処理に当たる役員の報酬や事務所費用なども、事業譲渡実行そして会社の清算までのスピードが速くなれば、それだけローコストとなるので弁済原資が増える。

 当社の場合も、このような民事再生法の恩典を活かして事業譲渡により不動産管理事業の存続を図り、弁済原資は事業譲渡代金を中核として作り出し、これを一括弁済することでスピーディに会社を清算していこうと考えたのである。従って、このような場合は、裁判所に再生計画案を提出するのは事業譲渡が完了した後である。事業譲渡後の当社は、すでに不動産と、それに関わる負債のみが残る、いわば抜け殻のようになっている。このためは、再生計画案とはいっても会社の再生を目指すものではなく、実質的には残存資産を換金して配当するため「弁済計画案」でしかない。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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