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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (92)
経済小説
2011年3月21日 07:00

<再生手続遂行と債権者数>

 開始決定後の民事再生手続の流れとしては認否書作成、財産評定、少額債権の優先弁済(少額の債権については、その後の再生手続を簡略化するために、裁判所の許可を得ることで、再生計画によらずに支払うことができる)、事業譲渡実行などを経て、再生計画案を提出することになることは先に述べた。
 この流れのなかでは、幾度となく債権者に対して文書を送ったり、書類に捺印をいただく作業が生じ非常に煩雑である。これを簡素化するためには極力、債権者数を減らすことが有効である。
民事再生手続は多数の債権者を相手にタフな交渉を... 認否書は再生債権を確定する作業である。流れとしては当社が提出する債権者リストに従って、裁判所より債権届出の案内がまずなされる。会社は裁判所を通じて債権届出を回収し、各債権者と相互確認しながら、再生債権の確定を図る。当社の場合は債権者数が非常に多かったため、債権届出案内の送達に当たっては裁判所の袋の支給を受け、当社において書類の印刷および袋詰め作業を行なった。書類の印刷ひとつとっても、債権者の一人ひとりに固有の債権者番号を割り当てる必要があり、封筒には送達先を明示する必要があるため、簡単に大勢で袋詰めすればいいというものではない。

 財産評定は、開始決定日の会社の資産および負債を公認会計士事務所などが精査して、仮に会社を破産させた場合の配当率を算出する作業である。財産評定を作成するに当たっては債権者と直接コンタクトをとる必要はないが、負債額が認否書と連動するのが本来の姿である。しかし当社の場合は、後述するように債権届出に時間を要し、この連動ができなかった。

 少額債券の優先弁済は認否書がほぼ確定したのち、中小債権者を速やかに救済するとともに、爾後の再生計画の手間を減らすため再生計画案で想定するのとほぼ同じ条件で、少額の債権者に対して先に弁済をしてしまう、というものだが、これも全債権者に案内し希望する債権者からは振込口座の指定を受けなければならない。また一定額以上を放棄すれば、一定額はすぐ弁済しますよ、という組み立てをした場合、その希望者からは債権放棄書も集めなければならない。

 再生計画案の提出にこぎつけた場合、次の課題は債権者集会で過半数の票を確保することである。これは議決権基準は再生債権額によるため、金額の大きい債権者に協力を要請すれば比較的容易であると思えるが、頭数基準は金額の多寡に係らず1票を有するため、少額の債券者が多いとそれだけ票固めがしんどい仕事になる。

 以上のようなことを見て分かるように、民事再生手続は多数の債権者を相手にタフな交渉をしてゆくことで初めて遂行できるものである。通常時ならともかく、会社を倒産させ、社内が混乱している状態で、これらを真正面からやっていくことには非常な困難が伴う。

 もし私が上記のようなことを事前にイメージできていたとしたら、保全命令の例外を使って開始決定前までに、少額の債権者に対してはさっさと支払いを行ない、さらに開始決定前費用の共益債権化手続も最大限に活用して、少額の債権者を大幅に減らすことを考えたであろう。たしかに、申立直後の混乱のなかでこのような作業を行なうことは、とくに現場に債権債務管理の意識が薄い会社の場合は大変難しい。しかし再生計画が進捗し、社員の人数が減ってくると、その状態で多数の債権者と対峙することはさらに辛いからである。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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