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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (93)
経済小説
2011年3月22日 16:10

<支払のコントロール>

 先述のように、開始決定日前後に発生する費用は、その請求内容によって再生債権になったり共益債権になったりする。また、開始決定日直前までは、保全命令の例外に準拠して必要な少額の支払を行なうことが可能である。いっぽう開始決定後に、再生債権を支払ってしまうことは詐害行為と見なされ、最悪は破産手続への移行を余儀なくされる。このため、私が銀行印をで預かり、支払を実行していくうえで、これらの取り扱いは慎重のうえにも慎重を期する必要があった。

自主的に支払を実行可能だからといって親しい取引先だけに... 開始決定後しばらくの間は、現場から回付される請求書には再生債権と共益債権が混在しており、これを如何により分けて管理していくかが課題となる。当社の場合も、経理部長をもってこの区分けを行なうこととし、定時払いなどの金額の大きなものや、性質が特殊なものは私も随時チェックすることとした。しかし、当初よりスピーディに民事再生法の要点を押さえて判定していくことは難しいため、当初1カ月程度は、支払内容を商標とともに代理人弁護士にメールで送り、判定してもらうことを常とし、その後、関係者が慣れるに従って、自主的な判定に委ねていく方法をとった。

 自主的に支払を実行可能だからといって親しい取引先だけに、本来は再生債権である債権を支払ってしまうようなことは避けなければならない。このような支払は無効となる(ただし、善意の第三者には対抗できない)ため不当利得として回収の交渉をしなければならない。また、再生債権を支払ったのに伴って相手先が裁判所に債権取下書を提出すると、裁判所にも不当弁済が発覚してしまい心証が悪くなる。目に余れば民事再生手続を廃止され、破産手続に強制的に移行させられることもありうる。会社倒産に伴う混乱のなかでは思わぬミスが発生するのは止むを得ないが、ミスの発生を最小限とするために、最大限の注意を払うことが求められた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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