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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (96)
経済小説
2011年3月25日 16:09

 このようなことがあるので、当社の場合は債権届出がなされた債権については、経営企画より債権調査依頼書を発行して、まず経理部、次いで担当部署でその調査を行ない、その結果については原則として各担当部署が責任を持つことにした。そして、各担当部署では経理が認識していない債権についても調査し、判明したときは新発債権者報告書を提出することとし、それを裁判所に送り、裁判所から追加で債権届出案内を送達する体制とした。
 しかし実際には、開始決定日現在の債務を締めて報告をしてきた部署は皆無であり、相手先から新たに請求書が届くとその時点で始めて新たな債権者として認識する、という状況に甘んじざるを得なかった。発注担当部署が自部署の取引先を掌握し、必要あれば集めて説明会を開催し、リーダーシップを持って締めていくのが本来の姿であるが、当社の場合はそのあたりが未整備であったため債権届出期間を延長して対応せざるを得なかった。そこまでしてもさらに遅れて債権者が現れ、対応に苦慮する場面もあった。

債権届出の期間中にも刻々と債権の内容が変化する... さらに、債権届出の期間中にも刻々と債権の内容が変化する。ときには反対債権を持った債権者が相殺を主張してくることがある。この場合は当然に再生債権の額が変わってくる。入居者が当社に対して有する敷金請求権は、開始決定後も入居者が住み続け家賃を支払いし続けた場合は、毎月1カ月分が共益債権化され、数カ月後には途中で退去しない限り再生債権は消滅する。このような場合、毎月再生債権額を修正してゆかなければならないが、現業が混乱する中で相互連絡がおろそかになり苦労した。日常の管理をおろそかにしていれば有事に苦労するし、日常の管理が適切に行なわれていれば、有事にも余裕を持って対応可能であることを痛感した。
 とくに、認否作業の中軸を担っていただいた経営企画課長の血と汗がなくしてこれは成し遂げられなかったであろう。大変な苦労をかけたことを申し訳なく思っている。この課長は、平成20年4月に入社し、システム管理を主に担当せしめつつ社内の状況把握に努めていただいていたが、今回、認否作業の中軸を担うことで一気に社内各課の状況に精通した状況となり、後にDKホールディングスの事業を継承した新会社セントラルレジデンスでは、その経験を活かし管理部長となった。

 当社の場合は申立当初の債権者リストに掲載した債権者は、銀行が10行、取引先が約40社、入居者が約1,700人であった。
 なお、当社はこのとき約1万戸の物件を抱えていたが、当社が敷金返還債務をどれだけ有するかが問題となった。このなかで、一般管理物件(当社がリスクを負わない手数料契約の物件)の場合は、敷金返還債務もオーナーが負っているため、これらの入居者は当社の債権者ではないと判断した。サブリース物件は12月1日を持って全て一般管理に切り替えたため、これらの入居者も当社の債権者ではなくなった。唯一、不動産ファンドとのパススルー型PM契約の場合は、リスクは一切をファンドが負うものの、敷金返還債務は当社が負うことが契約書に明記されていたため、これらの入居者は債権者となった。その後、PM契約物件のリストアップ漏れが発覚し数百人の入居者が追加された。取引先も債権調査の結果、2倍に膨らんだ。
 しかしその後、入居者の敷金債権は1カ月毎に1カ月分が共益債権化されるうえに、他の管理会社に管理が継承された場合はその時点で再生債権ではなくなるので、債権者数は逐次減少していった。その後、5月末に少額債券者に対して優先弁済を行なうことでさらに債権者数が減少した。このため6月10日に裁判所に再生計画案を提出した時点では、議決権を有する債権者数は総数で88人となった。そのほか相手先から届出はないものの、当社として債権が存在すると認めた「自認債権者」が若干あったが。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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