ベストはよく「人材不足だ」と言われる。その最たる原因が、プロパーで固められた経営陣や現場の店舗における店員の質の悪さといったもの。連結従業員数5,000名以上を有する同社には才能あふれる人物もいるのだろうが、なぜそのようなレッテルを貼られるのだろうか。
前出の元社員A氏は「私は青田買いで入社した。97~01年の5年間勤務し、いちばん良い時期に辞めたと思う。同時期、新店ラッシュで新卒を大量に採用していたが、50歳以上の古参従業員は新店誘導員、交通整備員などの閑職に回されていた。社員の私から見ても『人を大事にしないベスト電器』という印象だった。周りの社員も『労働時間が長い』と文句ばかり言っていた。ただ、現在はわからないが、メーカーからの商品陳列などに応えると商品券などのバックがもらえるおいしい一面もあった」と語る。A氏は当時、北田社長の独裁会社を批判していた。「一族経営はいずれ滅びる」と。
こうした社員のミスマッチ(?)を受けてか、03年4月8日、04年春採用予定の新入社員100人について全員を契約社員として雇用すると発表。人件費の抑制を図る一方、新入社員の約15%が1年以内で退職するミスマッチ(?)の現状への対策とも位置付け、3年後に正社員に登用する方針を明らかにしたこともある。当時でも、「地場主要企業で新卒者を契約社員として雇用するケースは極めて珍しい」とされていた。
また、単純に首都圏と地方で比較するわけにもいかないが、そうは言っても待遇水準の低さも目に付く。希望退職を断行する前の2010年2月期末における、同社単独の従業員数は3,898人、平均年収は392.9万円、平均年齢は37年11カ月、平均勤続年数は11年4カ月となっている。ここ1年間では、全上場企業平均年収は559.4万円、小売・流通・外食業界は471.7万円とされており、同社は上場企業3,629社中3,336位、業界内年収順位は350社中271位と平均より低い水準だ。
ライバルのヤマダ、コジマも平均年収はほぼ同等だが、年齢別に見ていくと差は歴然。年齢がそれなりに上がっても給料は上がらない様子は、元社員A氏の話と符合する。これでは中堅・幹部クラスのモチベーションも上がらないだろう。また平均勤続年数が高い割に、現在は新卒をとっていないようで、新陳代謝の遅れが懸念材料となっている。
【大根田 康介、流通取材班】
COMPANY INFORMATION
代 表:小野 浩司
所在地:福岡市博多区千代6-2-33
設 立:1953年9月
資本金:318億3,278万円
年 商:(10/2連結)3,456億1,900万円
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